歯を抜いて初めて総入れ歯にする場合、当院では、治療の途中で入れ歯を3回作ります。
「一度入れ歯を作れば、それで治療は終わるのではないか」
「なぜ同じ入れ歯を何度も作る必要があるのか」
このように疑問に思われる方もいらっしゃると思います。
入れ歯を複数回作る一番大きな理由は、歯を抜いたあとの歯ぐきや顎の骨が、時間とともに変化していくためです。
歯を抜いた直後の歯ぐきは、傷が治っていく過程で少しずつ引き締まり、その内側にある顎の骨も形を変えていきます。
特に、抜歯後の数か月間は変化が大きく、最初は合っていた入れ歯でも、時間がたつと隙間ができたり、動きやすくなったりすることがあります。
そのため、歯を抜いた日に装着する最初の入れ歯を、そのまま長期間使い続けることは難しい場合があります。
調整を繰り返しながら使用し、歯ぐきの状態が変化した段階で、改めて型取りと噛み合わせの確認を行い、その時のお口に合う入れ歯を作っていきます。
変化するのは歯ぐきだけではありません
長い間、奥歯がない状態で過ごしてきた方は、噛むための筋肉が弱くなっていることがあります。
残っている前歯だけで食事をしていたために、顎を前に出して食べ物を迎えにいくような、独特の噛み方が身についている場合もあります。
また、歯を見られたくないという気持ちから、口元に力を入れ、歯が見えないように話したり笑ったりする癖がついている方も少なくありません。
このような状態に新しい入れ歯を入れても、すぐに自然な噛み方や表情へ戻るとは限りません。
入れ歯を使いながら、
・奥歯で噛む感覚を取り戻すこと
・弱くなった噛む筋肉を動かすこと
・無理のない顎の位置を探すこと
・口元の緊張を少しずつ和らげること
・舌や頬、唇を使って食べる動きを練習すること
こうした変化を少しずつ積み重ねていく必要があります。
噛み方や顎の位置が変われば、入れ歯に必要な噛み合わせも変わります。
口元の緊張が和らぎ、以前より自然に笑えるようになれば、前歯の見え方や歯の長さの感じ方も変わります。
当院が治療の途中で入れ歯を作り直すのは、単に歯ぐきが痩せて入れ歯が合わなくなったからではありません。
歯ぐき、噛み合わせ、顎の位置、口元の動きが変化していく段階に合わせて、入れ歯そのものも作り変えていく必要があるためです。
