入れ歯コラムCOLUMN

保険の入れ歯で十分?自費の入れ歯と比較しながら解説!

こんにちは。神戸市東灘区にある木下歯科医院です。

歯の模型を使って説明する歯科医師と、説明を聞く患者

「保険の入れ歯は痛くて噛めないのか」「自費の入れ歯は種類が多くてどれがよいかわからない」など、初めて入れ歯を作る場合、保険の入れ歯と自費の入れ歯のどちらがよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。自費の入れ歯は多種多様で、どの素材が最適であるかは個人によって異なります。
今回は、保険の入れ歯と自費の入れ歯を比較し、それぞれの特徴を詳しくご紹介します。入れ歯を検討されている方は、ご自身のお口の状況に合わせてお読みください。

保険の入れ歯とは

黒い背景の前にマグネット付きの入れ歯が置かれている

保険の入れ歯は、使用できる材料や形に制限があり、個人の歯や粘膜にぴったりと合わせることが難しいため、使い勝手が悪いと感じる方が一定数います。
しかし、最近では、磁性アタッチメント入れ歯が条件付きで保険が適用されるようになり、保険の入れ歯でも快適に使えるようになっています。ここでは、保険の入れ歯の種類やメリット・デメリットについて詳しく解説します。

保険の入れ歯の種類

保険の入れ歯には、以下の2つの種類があります。

レジン床の入れ歯

レジン床の入れ歯は、床の部分(ピンクの部分)と人工歯(白い部分)がレジンというプラスチックで作られています。部分入れ歯には、金属のバネ(クラスプ)が付いていて、残っている歯に金属のバネを引っかけて入れ歯を保持します。

磁性アタッチメント入れ歯(磁石付きレジン床の入れ歯)

磁性アタッチメント入れ歯は、入れ歯と残っている歯の根っこに磁石を埋め込み、磁石の力で入れ歯を保持するタイプの入れ歯です。
磁石は入れ歯の裏側(歯茎に接する面)に付けるため、目立ちません。磁力で入れ歯を固定するため、金属のバネが必要なくなり、従来の保険の入れ歯にあったデメリットを解消できるようになりました。
ただし、保険で磁性アタッチメント入れ歯を作る場合、床の部分に使用される材料は限定されるため、自費の磁性アタッチメント入れ歯よりも性能が劣る場合があります。また、欠損歯の部位や数などの条件を満たされなければ、保険が適用されないこともあります。保険適用の条件については、以下のサイトを参考にしてください。
参考:日本歯科医学会「磁性アタッチメントを支台装置とする有床義歯の診療に対する基本的な考え方」

保険の入れ歯のメリット

保険の入れ歯は、製作工程が国で定められているため、どの歯科医院でも製作・修理が可能です。ここでは、保険の入れ歯の具体的なメリットについてご紹介します。
保険の入れ歯のメリットは、以下の4つです。

保険が適用されるため、費用の負担が少なくて済む

保険の入れ歯は、使用される材料が安価であり、さらに保険が適用されるため、比較的安く入れ歯を製作できます。

短期間で製作できる

保険の入れ歯は、製作工程が国で定められており、早ければ数週間〜1か月で製作可能です。
一方、自費の入れ歯は、しっかりとフィットさせるために何度も型を取り、噛み合わせを調整する必要があるため、完成するまでに数か月かかります。

ほとんどの歯科医院で対応できる

保険の入れ歯は、どの歯科医院でも製作できるため、身近にある歯科医院で治療を受けられます。
一方、自費の入れ歯は、入れ歯専門の歯科医院で製作されることが多く、場所によっては通院が難しい場合があるでしょう。

歯科医院で修理ができる

保険の入れ歯に使われるレジンや人工歯は、歯科医院で常時保管されているため、ヒビが入った場合でも、その場で修理が可能です。
一方、自費の入れ歯を修理する場合、技工所に修理を依頼するなど入れ歯を一定期間預けることがあります。

保険の入れ歯のデメリット

保険の入れ歯は、使用できる材料に制限があるため、自費の入れ歯に比べて見た目や使い勝手が劣る場合があります。ここでは、具体的なデメリットについてご紹介します。
保険の入れ歯のデメリットは、以下の6つです。

装着時の圧迫感が大きい

保険の入れ歯は、割れにくくするためにレジンを分厚く作る必要があります。そのため、総入れ歯のように大きな入れ歯では、常に口の中に大きなプラスチックが入っているため、慣れるまで圧迫感がある方が多いといわれています。

汚れや臭いがつきやすい

保険で使用されるレジンは、表面に傷や着色、歯石が付きやすい素材です。入れ歯の洗浄が不十分だと細菌が繁殖し、体に影響を及ぼす可能性があるため、入れ歯の適切なお手入れが重要といえるでしょう。

プラスチックのため、温度や味を感じにくい

総入れ歯は、プラスチックで上顎を広く覆うため、味や温度が感じにくくなります。温度が伝わらないと、味覚が落ちて食べ物をおいしく感じられず、毎食の楽しみが半減するでしょう。

残存歯の寿命が短くなる可能性がある

部分入れ歯は、金属のバネを歯に引っかけて保持するため、噛むたびに歯に負担がかかります。保険の入れ歯では、クラスプの形や位置に制限があるため、残っている歯に力を分散させることが難しい場合があるでしょう。そのため、歯が1本抜けると、次々と歯を失う可能性が高くなるといわれています。

金属のバネが目立つため、入れ歯だとわかりやすい

「笑ったときに白い歯の間に金属の色が見えると、人目が気になる」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
保険で使用できるレジンの色や素材には制限があるため、自然な口元に近付けることが難しく、入れ歯だと明らかにわかる場合があります。

プラスチックが劣化するため、耐久性に劣る

保険の入れ歯に使用されるプラスチックは劣化しやすく、長期間使用すると破損やヒビなどトラブルが起こりやすくなります。通常、数年から5年程度で作り直す必要があるとされています。

自費の入れ歯とは

テーブルの上に置かれた歯の模型

自費の入れ歯は自由に素材を選べるため、オーダーメイドで製作できます。ここからは、自費の入れ歯の種類やメリット・デメリットについて詳しく解説します。それぞれの特徴を把握して、ご自身に合った素材を選ぶことが重要です。

自費の入れ歯の種類

自費の入れ歯には、以下の4つの種類があります。

金属床の入れ歯

金属床入れ歯は、下の入れ歯では「舌が当たる部分」、上の入れ歯では「上あごの部分」が金属でできている入れ歯です。
金属は強度が高いため、レジンより薄く作ることができ、装着時に違和感が少ないというメリットがあります。また、温度が伝わりやすいため、食べ物がおいしく感じられるでしょう。

シリコンの入れ歯

シリコン入れ歯は、入れ歯の内側(歯茎に当たる部分)にシリコンが使用されているため、レジン床に比べて歯茎の痛みを軽減できます。また、歯茎に密着するため、入れ歯が外れにくく、快適に使用できるでしょう。

ノンクラスプデンチャー

ノンクラスプデンチャーは、保険の入れ歯の金属のバネにあたる部分がレジンでできているため、入れ歯だと気付かれにくいのが特徴です。金属床と組み合わせて製作することもできます。

インプラントオーバーデンチャー(インプラントと入れ歯)

インプラントオーバーデンチャーは、数本のインプラントを埋め込み、インプラントで入れ歯を支えるタイプの入れ歯です。
通常、インプラントは取り外しができませんが、インプラントオーバーデンチャーは入れ歯のように取り外しが可能です。取り外して洗えるため、口内や入れ歯を清潔に保つことができます。また、インプラント部分がしっかりと固定されているため、入れ歯がぐらつく心配もありません。

自費の入れ歯のメリット

次に、自費の入れ歯のメリットを詳しく解説します。
自費の入れ歯のメリットは、以下の6つです。

口元が自然で入れ歯だとわかりにくい

自費の入れ歯は多様な素材が使えるため、天然の歯茎や歯に近い質感を再現できます。また、金属のバネを使わずに固定できるため、入れ歯だと気付かれにくい自然な口元を作り出せます。

柔らかい素材で作れるため、痛みが少ない

レジン床は硬いため、歯茎に接触し続けることで傷が付くと、痛みで硬いものが噛めなくなり、日常生活に支障が出る場合があります。シリコン素材を用いることで、歯茎に当たったときの痛みを軽減できます。

味や温度が感じやすいため、食事が楽しめる

金属床は熱がよく伝わるため、レジン床に比べて食べ物の味をより感じやすく、健康な歯と同じように食事を楽しめます。

劣化しにくく、長持ちする

金属床や高品質のレジンは、保険で使用される安価なレジンに比べて劣化しにくく、正しく取り扱えば数十年使える場合もあります。
ただし、シリコン素材は金属床より劣化しやすく、シリコンの張り替えが必要になること場合があるので、念頭に置いておきましょう。

残っている歯への負担が少ない

自費の入れ歯は自由に設計できるため、入れ歯にかかる力を粘膜や残っている歯全体に分散させることが可能です。入れ歯を支える歯の負担を軽減することで「支台歯がグラグラになり抜歯をしなければならない」というトラブルを防げます。

粘膜に密着するため、使い心地がよい

シリコンの入れ歯は上顎などの粘膜に密着するため、口を動かすと入れ歯が外れるなどのトラブルを防げます。また、自費で使用される金属床や高品質のレジンは、より薄く作れるため、異物感を減らし、入れ歯による苦痛が軽減できるでしょう。

自費の入れ歯のデメリット

つづいて、自費の入れ歯のデメリットを詳しく解説します。
自費の入れ歯のデメリットは、以下の4つです。

保険適用外のため、費用がかかる

自費の入れ歯は、金やチタン、シリコンなど、材料が高価なうえに保険が適用されないため、入れ歯の製作費用が高額です。さらに、何度も型を取り、噛み合わせを調べるため、その分技工料も高くなります。

オーダーメイドで精密に作るため、時間がかかる

自費の入れ歯は、複数の工程を経て個人の口に合った入れ歯を製作します。オーダーメイドのため、使い心地のよい入れ歯が完成しますが、でき上がるまでに数か月かかることがあります。その間、何度も歯科医院に通い、噛み合わせや歯型を取る必要があるでしょう。

チェアーサイドでの修理が難しい場合がある

シリコンや金属床などの特殊な素材を使用する場合、当日の修理ができない場合があります。技工所での修理が必要な場合は、入れ歯を預けなければなりません。また、素材によっては修理が難しく、新しく作らなければいけない場合もあります。


素材によっては手入れに手間がかかる

シリコンの入れ歯は、専用の洗浄剤が必要であり、取り扱いを間違えると、変形して使えなくなる場合があります。洗浄方法や保管については、入れ歯の受け渡しのときに、歯科医院で確認しましょう。

保険の入れ歯と自費の入れ歯を比較

虫眼鏡・天秤・矢印・COMPAREと表示された画面を男性が指で触れている

保険の入れ歯と自費の入れ歯の違いをわかりやすく表にまとめました。


<保険の入れ歯・自費の入れ歯の比較>

  保険の入れ歯 自費の入れ歯
入れ歯の費用 比較的安価で作れる 高額である
使用する素材の種類 制限がある 種類が多く、自由に組み合わせて製作できる
<素材の種類> コバルトクロム ・チタン ・金 ・シリコン
入れ歯の製作期間 最短で数週間から1か月程度で完成する 入れ歯の種類によっては、数か月かかる場合がある
入れ歯の見た目 金属のバネが目立つ 天然の歯茎や歯に近い質感を再現できるため、目立ちにくい
入れ歯を装着したときの快適さ 噛んだときの痛みや、入れ歯が動くなどの不快感が残る 個人のお口に合わせて製作するため、使い心地がよい
入れ歯の修理 当日に修理ができる 修理のため、預ける必要がある


保険・自費入れ歯の費用の目安
広げられたお札の上に青い電卓と聴診器が置かれている

自費の入れ歯は、使用する素材によって価格が大きく変わります。以下に、保険・自費入れ歯の費用をまとめてみました。あくまで目安として検討いただき、詳しい費用は、それぞれの歯科医院に確認することをおすすめします。

<保険・自費入れ歯の費用の目安>

  保険の入れ歯 自費の入れ歯
部分入れ歯の費用目安 3,000~10,000円 (3割負担の場合)
※磁性アタッチメント入れ歯の場合、追加で費用がかかる場合がある
120,000~600,000円
総入れ歯の費用目安 9,000~15,000円 (3割負担の場合)
※磁性アタッチメント入れ歯の場合、追加で費用がかかる場合がある
200,000~2,000,000円


保険の入れ歯より自費の入れ歯のほうがいいの?
ソファに座り、パソコンを膝に乗せて考え事をしている高齢男性

保険の入れ歯でも不都合なく使える方もいれば、自費の入れ歯でも噛めなかったり不快に感じたりする方もいます。口の広さや舌の大きさは個人差があるため、どの種類の入れ歯が適しているかは個人によって異なります。

保険の入れ歯がおすすめの方

以下では、保険の入れ歯をおすすめできる方の特徴をご紹介します。

できるだけ費用を抑えて入れ歯を作りたい方

保険の入れ歯は、できるだけ費用を抑えて入れ歯を作りたい方に向いています。
安いからといって、保険の入れ歯が使えないわけではありません。多くの方が、保険の入れ歯を調整しながら、お口に合わせて使っています。磁性アタッチメントが保険適用になったことで、保険の入れ歯でも快適に使える方が増えているのが現実です。

初めて入れ歯を作る方

初めて入れ歯を作る方は、保険の入れ歯を作ることをおすすめします。
初めて入れ歯を使う場合は、大抵の方が入れ歯に慣れるまで時間がかかるケースが多いです。自費で入れ歯を作ったにもかかわらず使えなかったら、高額な入れ歯の費用がムダになります。ご自身のお口に合うように調整を繰り返すことで、フィットする入れ歯の形がわかります。そのあと、自費の入れ歯で不便に感じる部分を補うことで、さらに快適な入れ歯に仕上がるでしょう。

ブリッジかインプラントで迷っている方

歯が抜けたあとにインプラントにする場合、骨の形が安定するまでインプラントを埋め込むことができません。その期間、入れ歯を入れることで隣接歯の傾斜を防げます。
また、ブリッジは両隣の歯を削る必要があるため、躊躇する方もいるでしょう。とりあえず保険の入れ歯を作ることで、ご自身にとってよりよい方法を選択できます。

自費の入れ歯がおすすめの方

自費の入れ歯を作る場合、保険の入れ歯を使用したうえで、不便な部分を改善できる素材を選ぶことが重要です。
以下では、自費の入れ歯をおすすめできる方の特徴をご紹介します。

入れ歯だと気付かれたくない方

保険の入れ歯の見た目が不自然で、人目が気になる場合、ノンクラスプデンチャーや高品質のレジン素材が向いています。金属のクラスプがなく、天然の歯茎に近い質感を出せるため、入れ歯が目立たず自然な口元を再現できるでしょう。

入れ歯が痛くてしっかり噛めない方

シリコン製の入れ歯は、粘膜に当たる部分が柔らかいため、硬い物でもしっかり噛めます。また、入れ歯と歯の間に食べ物が詰まりにくいため、粘膜を傷付けるのを防ぎ、歯茎の痛みを軽減できるでしょう。

会話中に入れ歯が外れる方

保険の入れ歯は粘膜にぴったり合わせるのが難しいため、入れ歯と粘膜の間に空気が入り、発音しにくい場合があります。会話中に入れ歯が外れると、日常生活に支障が出るでしょう。
一方、シリコン製の入れ歯やインプラントオーバーデンチャーは入れ歯が安定するため、外れる心配がほとんどありません。

入れ歯を作る前に知っておきたいこと

グレーの背景の前に手に持たれた電球がある

保険の入れ歯は6か月以内に新しく作れない

保険の入れ歯は、同じ部位に対して6か月以内に新しい入れ歯を作れないというルールがあります。これは、一人が入れ歯をいくつも作ると医療費が膨れ上がるため、国で定められたルールです。
保険の入れ歯を作る場合は、丁寧に取り扱い、紛失しないように注意しましょう。

自費の入れ歯も医療費控除の対象になる場合がある

自費の入れ歯も医療費控除の対象になる場合があります。
治療時には、入れ歯の費用を全額支払う必要がありますが、確定申告で医療費控除を申請することで、税金が軽減されます。確定申告では領収書が必要です。失くさないように保管しましょう。

入れ歯を選ぶポイントと注意点

レントゲン写真を使って説明をする男性歯科医師と、説明を聞く高齢女性
入れ歯の種類を選ぶときのポイントや注意点をご紹介します。

審美面、機能面など重視するポイントを決める

自費の入れ歯を作る場合、満足できない部分を明確にすることで、より自分に合った入れ歯を作れます。食べるときに痛くない入れ歯を作りたい方と見た目が自然な入れ歯を作りたい方では、同じ自費の入れ歯でも使用する素材や形態は変わるのです。
まずは保険の入れ歯を使い、不便に感じる部分に優先順位を付けて素材を選ぶことをおすすめします。

金属アレルギーがある方は、注意が必要

自費の入れ歯でも金属を使用する場合があるため、金属アレルギーがある方は注意が必要です。
金属床に使われる素材は、チタンや金など種類がいくつかあります。金属アレルギーがある方は、アレルギー反応が出ない安全な種類を選びましょう。

求める分野を得意とする歯科医師に任せる

自費の入れ歯には、金属床入れ歯やシリコン入れ歯など、多くの種類があります。多くの素材を取り扱う歯科医院であれば、ご自身に合った最適な種類を選べるでしょう。
自費の入れ歯は、歯科医師や歯科技工士の技術によって仕上がりに大きく差が出るため、経験豊富な歯科医院を選ぶことをおすすめします。

まとめ

水色の背景の前に歯の模型、治療器具、問診票が置かれている

入れ歯の使い心地によって、日常生活の快適度が大きく変わります。保険の入れ歯でも問題なく使える方もいれば、自費の入れ歯でも不都合がある方もいます。どちらにするか迷っている方は、まずは保険の入れ歯を作ることをおすすめします。お口に合った入れ歯を製作するには、高い技術が必要です。特に、自費の入れ歯は高価で修理が難しい場合があるため、後悔のないように入れ歯の種類は慎重に選びましょう。
入れ歯を検討している方は、神戸市東灘区にある木下歯科医院にお気軽にご相談ください。