医院ブログBLOG

新たな世界へ。。

2010年5月19日

最近、自分の歯科医師としての新たなステップアップへの憤りを感じています。
というのも、二つ自分の中で大きな転機がありました。
一つ目は、ここ数ヶ月、毎月審美の山﨑長老先生のところに教えを乞いにいく中で、長老先生のケースを朝から晩まで大画面で見ていると、目が肥えてしまい、今まで綺麗だと思っていた自分のケースの今後の課題が見えてきたことです。
そしてもう一つは、先日岡山から来て下さった患者様が自分が遭遇したことのない超難症例で、結果的にはご満足頂けたものの、今までの自分の知識では太刀打ちできなかったことです。
歯科医師免許をとってから、現在まで膨大な時間とお金を投資して、自己研鑽に歯科医師としての知識や技術や人間力を向上させるため全力を尽くしてきました。
その中で、いつも一つの大きな転機や、大きなレベルアップにつながってきたタイミングというのは、偉大な先生との出会い、そしてその時の自分では太刀打ちできないような難しい患者様との出会いでした。
特に今回の岡山からの患者様との出会いは大きかったように思います。
高齢であること、様々な病気をお持ちであること、遠方の為通院はできないので、1週間で完了させてほしいこと、色々な制約の中で、なんとか救ってほしいというご家族の方の熱意を感じ、引き受けることとなったのですが、正直来られてびっくりしました。
今まで、散々どこに行っても駄目だったという方の入れ歯を作ってきましたので、毎回毎回チャレンジの連続ばかりでしたが、最終的にはご満足頂ける結果にまでは辿り着けたので、きっと今回も大丈夫だろうと自信も持っていました。
正直甘かったです。
これほどの難しいケースにこれから遭遇することがあるのか、というくらい、ありとあらゆる悪条件が重なっていました。
今までの方法では太刀打ちできないので、考えつく限りの手段を尽くし、技工士の森永さんと悩みに悩んで格闘する一週間でした。
引き受けてしまったからには、絶対にご納得頂けるものを完成させなければいけないというプレッシャーと、時間制約があまりにタイトだったので、その難しいケースに対してどう挑んでいくのかという作戦を考える期間や、自分の中での心の整理や精神統一する時間があまりになかったので、全く眠れない1週間でした。
物理的には2ヶ月かけるところを1週間でまとめてやるだけなので、机の上では可能だと判断して私も技工士もスタートしたのですが、実際やると、やはり人の手がやることなので、私たちの心の状態が落ち着いていないと、普段は起こらない迷いやためらいを産み、正確な判断を鈍らせてしまったり、いつもと同じようにやっているつもりでも、手がうまく動いていないように感じたりし、いかに術者の心の状態が大切なのかを痛感しました。
通勤電車の中や自宅、仕事をしている時間以外は全てわらをもすがる想いで色々な入れ歯で有名といわれる先生の本を読みました。
そして最終日。
かなり時間はかかりましたが、技工士の森永さんも非常に良く頑張ってくれて、なんとか無事セットできましたし、患者様もご家族もとても喜んで下さいました。
本当に入れる直前まで全くどうなるか分からなかったので、不安で一杯でしたが、それをぬぐいさるような見事な入れ歯でした。
まさに、苦労した分、私と森永さんの魂がこもった入れ歯になったのではと思いました。
入れ歯の作り方もこれが王道というものはなく、入れ歯を深いところまで勉強していくと、流派や理論がいくつもあり、これを体得すれば全てうまくいくというものがなく、
入れ歯治療の奥の深さや、本当の怖さというものを痛感した一週間でした。
ですが反対に、今までの自分の中での合格ラインというものがかなり引き上げられたこと、どこに行ってもどうしようもなかった方をお救いするという歯科医師としての使命感というものを再確認できました。
いつの日も物事の真髄を教えて下さるのは患者様です。
今回のことは、我々にとって大きなステップアップにつながったと思います。
岡山の患者様から教えて頂いたことを胸に、これから更なるレベルアップをしていきたいと思います。
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