入れ歯コラムCOLUMN

歯周病菌にはどんなものがあるの?他人や全身への影響を解説

こんにちは。神戸市東灘区にある木下歯科医院です。
歯周病について説明する様子

歯周病は、口腔内の細菌が原因で歯茎や顎の骨に悪影響を与える病気です。放置すると歯を失う可能性があり、さらに全身の健康にも影響を及ぼすことがあります。

本記事では、歯周病菌の種類や歯周病が全身に及ぼす影響、予防法について詳しく解説します。日々の口腔ケアが歯周病を防ぐ鍵となるため、早期の対策が重要です。

歯周病の原因となる菌
歯周病の原因となる菌のイメージ

歯周病は、口腔内に存在する細菌によって引き起こされる感染症です。その原因となる歯周病菌は、特定の1種類を指すものではなく、歯周病の発症や進行に関与する細菌の総称です。

歯周病に関連する細菌は800種類以上あるとされており、特に注意すべきなのが、レッドコンプレックスと呼ばれる細菌群です。レッドコンプレックスは、歯周病を悪化させる代表的な細菌のグループで、以下の3種類の菌が含まれます。

・P.g菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)
・T.f菌(タンネレラ・フォーサイシア)
・T.d菌(トレポネーマ・デンティコーラ)

これらの細菌は互いに連携して歯周病を進行させます。特に、P.g菌は病原性が最も強いとされ、歯周ポケットが深くなる原因になります。

口腔内が健康な状態では、これらの菌は問題を引き起こしにくいですが、不十分なブラッシングや不衛生な環境が続くと、歯茎に炎症が生じ、歯周病のリスクが急激に高まります。

特にP.g菌は、血液を栄養源として急激に増殖する性質があり、進行した場合には顎の骨が溶けるなどの深刻な影響を及ぼすことがあるため、注意が必要です。

歯周病菌の種類
歯周病菌の種類を紹介する歯科衛生士

前述の通り、歯周病の原因となる菌のなかでも、特に悪影響を及ぼす悪玉菌がいくつか存在します。ここでは、それぞれの特徴について詳しく解説していきます。

P.g菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス)

P.g菌は、日本人の多くが感染していると言われる歯周病菌の代表格です。この菌は、生まれたばかりの赤ちゃんには存在せず、18歳以降に感染することが多いとされており、唾液を介して感染することがあります。

P.g菌は内毒素を産生し、歯周病特有の口臭の原因となるほか、顎の骨を溶かして歯をぐらつかせます。また、白血球の働きを阻害する酵素を持つため、免疫系へも影響を与える可能性がある菌です。

T.f菌(タンネレラ・フォーサイシア)

T.f菌も成人の歯周病に深く関与している菌の一つです。この菌は紡錘状のような形をしており、内毒素を放出して歯茎に炎症を引き起こします。他の歯周病菌と協力し合い、歯周病を進行させる要因となります。

T.d菌(トレポネーマ・デンティコーラ)

吸血鬼細菌と呼ばれるT.d菌は、血液をエネルギー源として活発に活動する細菌です。出血が起こりやすい歯茎では、この菌が増殖しやすくなります。

T.d菌は運動能力が高く、細胞間を自由に移動できるため、血管内に侵入して増殖することもあります。全身への影響が懸念される菌です。

その他の歯周病菌

そのほかにも、A.a菌(アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス)やP.i菌(プレボテラ・インターメディア)という細菌もあります。

A.a菌は、急速に顎の骨を破壊する侵襲性歯周炎に関連する細菌です。P.i菌は、女性ホルモンの変化に影響を受けやすく、妊娠中に発症する妊娠性歯肉炎に関与する菌です。

歯周病菌は人にうつるの?
歯周病菌は人にうつるのか疑問をもつ女性

歯周病菌は、主に唾液を介して人から人へうつることがあります。

例えば、乳児に食事を与える際に、保護者の方が食べ物を口の中で潰したり、温度を確認するために口を付けたりすると、歯周病菌が乳児にうつる可能性があるのです。特に1歳6か月前後の子どもは、免疫力が未発達で歯周病菌に感染しやすいため、注意が必要です。

歯周病が全身に及ぼす影響
歯周病が原因で心筋梗塞になった男性

歯周病は口腔内の健康だけでなく、全身にも影響を及ぼす可能性があります。歯周病菌が血液に入り込むことで、さまざまな疾患を引き起こすリスクが高まります。ここでは、歯周病が関係する代表的な全身疾患について解説します。

糖尿病

歯周病菌は、血液中に侵入して糖代謝に悪影響を及ぼすことがあります。歯周病の炎症が、インスリンの働きを妨げ、糖尿病を引き起こす要因となります。また、糖尿病の患者さんは免疫力が低下し、歯周病にかかりやすくなるため、お口の中のケアが糖尿病管理にも役立ちます。

狭心症・心筋梗塞

歯周病菌が血液中に入ると、動脈内にプラーク(粥状の脂肪性沈着物)が形成され、血管の壁を厚くします。これによって、狭心症や心筋梗塞を引き起こすことがあるのです。

脳梗塞

歯周病菌が血流に乗って全身を巡ると、脳にも影響を与えることがあります。この影響で動脈硬化が進み、脳梗塞を引き起こすこともあります。脳梗塞は、歯周病が原因で発症する可能性のある重大な疾患の一つです。

誤嚥性肺炎

口腔内の歯周病菌が唾液とともに気管に誤って入ると、肺に炎症を引き起こし、誤嚥性肺炎を発症することがあります。特に高齢者は嚥下機能が低下しやすく、この病気にかかるリスクが高まります。

早産・低体重児出産

妊娠中に歯周病にかかると、ホルモンが歯周病菌の増殖を促進し、早産や低体重児出産のリスクが高まります。これらを防ぐためにも、妊娠中は定期的に歯科検診を受け、口腔内の健康を守ることが大切です。

メタボリックシンドローム

歯周病とメタボリックシンドロームにも深い関係があるといわれています。歯周病によって放出される毒素は、脂肪組織や肝臓のインスリン抵抗性を高め、血糖値を上昇させることがあります。これにより、メタボリックシンドロームが進行するリスクが高まるのです。

骨粗鬆症

歯周病が進行して歯を失うと、食べ物をしっかり噛めなくなります。これによって、ビタミンDやカルシウムなどの栄養が不足すると、骨粗鬆症を悪化させることがあるのです。骨粗鬆症が進行すると、骨折のリスクも高まるため、注意しなければなりません。

バージャー病

バージャー病は手足の血管が詰まる病気で、歯周病と強い関連があるとされています。歯周病が進行すると血管内に血栓をつくり、バージャー病を引き起こすことがあるのです。歯周病が悪化すると、手足の血流障害を引き起こし、症状が進行する可能性があります。

歯周病の予防法
歯間ブラシを使用して歯周病の予防をする女性

最後に、歯周病の予防に効果的な方法をいくつかご紹介します。

毎日の歯磨きを徹底する

歯周病を予防するためには、毎日しっかりと歯磨きをして、歯周病の原因である歯垢を取り除くことが大切です。歯磨きは食後に行うのが理想的ですが、少なくとも寝る前には丁寧に行いましょう。

歯ブラシは鉛筆を持つように握り、毛先を歯と歯茎の境目に45度の角度で当てて磨くことが大切です。歯1本ずつ細かく磨くことで、効果的に歯垢を取り除けます。

フロスや歯間ブラシを活用する

歯ブラシだけでは、歯と歯の間や奥歯など細かい部分を十分に磨けません。フロスや歯間ブラシを活用することで、歯と歯の間などの歯ブラシが届きにくい部分に付着した歯垢も取り除けます。これらの補助清掃用具を適切に使用することで、歯周病予防に効果を発揮します。

タバコを控える

タバコの煙に含まれる有害物質は、歯茎の血流を悪化させます。これによって、免疫力が低下すると、歯周病のリスクが高まります。

喫煙習慣がある方は、タバコの本数を減らし、最終的には禁煙を目指しましょう。禁煙することで、歯周病だけでなく、口腔内の健康全体に良い影響を与えられます。

バランスの取れた食事を心がける

食生活が偏ると、免疫力が低下し、歯周病のリスクが高まります。特に、歯肉や顎の骨に必要なコラーゲンを合成するためには、良質なタンパク質を摂ることが大切です。ビタミンCや鉄分を含む食材を摂り、バランスの良い食事を心がけましょう。

定期的に歯科検診を受ける

歯周病は初期段階では自覚症状が少ないため、早期発見が難しい場合があります。そのため、定期的に歯科医院で検診を受けることが非常に重要です。

歯科医院でプロフェッショナルケアを受けることで、普段の歯磨きでは落としきれない歯垢や歯石を取り除き、歯周病の進行を防ぐことができます。また、正しい歯磨き方法や補助用具の使い方を学ぶことも歯周病の予防に役立ちます。

まとめ
口腔内のケアをして健康に過ごす家族

歯周病が進行すると歯を失うだけでなく、全身の健康にも影響を及ぼすことがあるため、早期の対策が不可欠です。

原因となる細菌を減らすためには、日々の口腔ケアと定期的な歯科検診が重要です。健康な歯茎の状態を維持するためにも予防策を積極的に取り入れましょう。早期の段階で歯科医師のアドバイスを受けることも、長期的な口腔の健康維持に繋がります。

歯周病にお悩みの方は、神戸市東灘区にある木下歯科医院にお気軽にご相談ください。

当院では、虫歯・歯周病治療や入れ歯治療、インプラント治療など、さまざまな診療に力を入れています。ホームページはこちら無料相談も行っておりますので、ぜひご覧ください。