こんにちは。神戸市東灘区にある木下歯科医院です。
歯を抜いて入れ歯を作るとき、保険で作るか自由診療でよりよい入れ歯を作るか、お悩みの方も多いのではないでしょうか。「保険の入れ歯は見た目でバレるかな?」「自費で高い入れ歯を作ったら長持ちするのかな?」といった疑問が浮かんでくるでしょう。
自費の入れ歯にもさまざまな素材があります。入れ歯を快適に使用するには、自分に合った素材を選択しなければいけません。
今回は、入れ歯の素材の種類やそれぞれの特徴についてご紹介します。保険適用の有無、メリット・デメリットをわかりやすく解説しますので、入れ歯を検討されている方はぜひ参考にしてください。
入れ歯の素材とは?
高い入れ歯を作れば、すべての人が満足できるわけではありません。症状やお口の状態に合った素材を選ぶことで、入れ歯のメリットが活かせます。例えば、入れ歯が外れやすくて困っている方には、磁石の力で入れ歯を固定する「磁石アタッチメント入れ歯」が向いているでしょう。
しかし、磁石アタッチメント入れ歯を使うには、歯の根っこがしっかり残っている必要があります。まずはそれぞれの入れ歯の特徴を理解して、自分に最適な入れ歯を選びましょう。
主な入れ歯の素材を表にまとめてみました。
<主な入れ歯の素材>
保険適用の入れ歯 | 自由診療の入れ歯 | |
---|---|---|
入れ歯の素材 | ・レジン床入れ歯 | ・金属床入れ歯 (金属の種類:コバルトクロム、チタン、金など) |
・ノンクラスプデンチャー ・シリコン入れ歯 |
||
・磁石アタッチメント入れ歯 (残っている歯の本数など条件がある) |
残っている歯の条件によって選べる素材が制限されるため、歯科医院で診てもらう必要があります。自由診療で入れ歯を作る場合は「金属が見えない入れ歯がよい」など、歯科医師にご自身の希望を伝えましょう。具体的に伝えることで、最適な入れ歯を提案してくれます。
なお、保険適用で入れ歯を作る場合、6か月以内には作り直しができないというルールがあります。国で決められているため、歯科医院を替えても同じ部位には入れ歯を作れません。6か月以内に入れ歯を作り直したい場合は、全額自己負担になります。
ただし、違う部位の歯が抜けた場合は、新しく作ることができます。
参考元:厚生労働省「有床義歯の取扱いについて」
ここからは、入れ歯でよく提案するレジン床入れ歯と金属入れ歯について解説し、ノンクラスプデンチャーとシリコン入れ歯、磁石アタッチメント入れ歯についても簡単にご紹介していきます。
レジン床入れ歯
一般的に、保険診療で作られる入れ歯はレジン床入れ歯です。歯茎の代わりになるピンクの部分や歯の代わりになる人工歯がレジンでできています。部分入れ歯は、残っている歯に金属のバネ(クラスプ)を引っ掛けて歯を固定するため、端に金属のツメがついています。レジン床入れ歯は、保険で簡単に噛む機能が回復できる反面、使用感が良くないと感じる方が一定数います。
以下に、レジン床入れ歯のメリットとデメリットを詳しくご紹介します。
レジン床入れ歯のメリット
まずは、レジン床入れ歯のメリットについて解説します。
費用が安い
レジン床入れ歯の最大のメリットは、費用が安いことです。歯を抜いた場合、抜いた部分に人工物を入れる必要がありますが、インプラントは費用が高いため簡単には選べず、ブリッジは隣の歯を削る必要があるため、迷う方がいるでしょう。保険が適用されるレジン床入れ歯は、費用がかからず、多くの方が手に取りやすい入れ歯です。比較的修理がしやすい
レジンは、削ったり磨いたりしやすく、入れ歯として扱いやすい素材です。
入れ歯を入れて期間が経つと、歯茎の形が変化し、合わなくなります。歯茎に当たって痛くなった場合、レジン床入れ歯は削ったりレジンを足したりして調整できます。また、金属のバネを細かく調整することで、残っている歯の負担も軽減できます。
手軽に作れる
レジン床入れ歯は保険診療で、作る工程が決められているため、短期間で作れます。
小さい部分入れ歯であれば、数回で作ることが可能です。自由診療で作る入れ歯は、歯にピッタリ合わせるため、作る工程が細かく期間がかかります。インプラントを入れる前に隣の歯が倒れないように、一時的に保険で入れ歯を作ることもできます。
どこの歯科医院でも作れる
保険診療で使用できる材料は限られているため、どこの歯科医院で作っても、だいたい同じ入れ歯が作れます。自費の入れ歯は歯科医院によって材料や技術が異なるため、同じ素材の入れ歯でも費用や仕上がりに差が出ます。
レジン床入れ歯のデメリット
次に、レジン床入れ歯のデメリットについて解説します。
異物感が大きい
レジン床入れ歯の大きなデメリットは異物感が大きいことです。特に、総入れ歯のレジン床は厚さが3~4mm程度あるため、お口に入ると窮屈に感じます。
会話がしにくい、不快感が強いなど私生活でストレスを感じる方もいます。
歯茎に当たって痛い
レジンは弾力が少ないため、歯茎に当たり続けると痛みが出る場合があります。歯茎に傷が生じると軽く当たるだけでも痛むため、入れ歯をつけるのが苦痛になる方もいるでしょう。
味を感じにくい、食べにくい
総入れ歯は上顎を広範囲に覆うため、温度感覚や味覚が鈍くなります。温度が伝わらないと、食べ物のおいしさが半減してしまうでしょう。
レジン床入れ歯は、自費の入れ歯よりフィット感が劣るため、食事中に入れ歯が動いて、入れ歯と歯茎の間に物が詰まりやすくなります。
変色・劣化しやすい
レジンは、変色しやすく、表面が傷つきやすい素材です。
長期間お口の中にあると、入れ歯が劣化し黄褐色に変色します。ヤニや着色も付きやすいため、見た目も悪くなります。また、表面が傷つくことで汚れがたまり、細菌が増殖するデメリットもあります。
入れ歯が目立つ
部分入れ歯には金属のバネがついているため、見えやすい位置にあると金属が目立ちます。また、保険適用のレジンは、色や質感から入れ歯だと分かりやすいのが難点です。
自由診療では、レジン素材以外の人工歯や金属以外のクラスプもありますので、より自然な入れ歯を作れるでしょう。
バネを引っ掛けている歯に負担がかかる
保険の部分入れ歯は、残っている歯に金属のバネを引っ掛けて、入れ歯を固定しています。そのため、バネを引っ掛けている歯に大きな負担がかかります。噛む度に、残っている歯をグラグラ動かしている状態です。
入れ歯を入れることで、残された歯の寿命を縮めることにもなります。自費の入れ歯は、噛む時の力を分散させたり入れ歯を軽くしたりするなど、さまざまな工夫がされています。
金属床入れ歯
金属床入れ歯は、上顎を覆う部分が金属でできています。金属は、コバルトクロムやチタン、ゴールドなどが使われています。自由診療なので、歯科医院によって材料や工程が異なり、仕上がりにも差が出ます。
以下に、金属床入れ歯のメリット・デメリットをご紹介します。
金属床入れ歯のメリット
まず、金属入れ歯のメリットについて解説します。違和感が少ない
金属は強度が高いので、レジン床に比べて薄く作れます。
入れた時の違和感が少なく、食事や会話中も快適に過ごせるでしょう。
外れにくい
金属床入れ歯は自由診療で作製するため、歯や顎の形に合わせてより精密に作ることができます。
お口にフィットすることで、食事中や会話中に外れるトラブルを防げます。
ご飯がおいしく感じる
金属床は熱をしっかり伝えます。熱い、冷たいなどの感覚が伝わることで、食事をよりおいしく感じられるでしょう。例えば、温かいうどんを食べたとき、温かさを感じられないといくらおいしくても味覚が半減します。
総入れ歯は上顎を広く覆うため、味覚が鈍くなります。入れ歯でも熱がしっかり伝わることは、おいしく味わうために重要です。
レジン床入れ歯に比べて清潔である
金属は表面が傷つきにくく汚れが落としやすいため、レジン床入れ歯に比べて清潔に保てます。金属の部分は歯ブラシで優しくこすり、ていねいに汚れをとりましょう。
入れ歯洗浄剤は、金属の種類により使用できない場合があるので、作製した歯科医院に確認しましょう。
歯の負担が少ない
金属床入れ歯は形を自由に設計できるため、残っている歯全体で入れ歯を支えるように力の分散が可能です。
また、金属のバネを目立たない場所に作るなど、自然な口元を再現できます。
長持ちする
レジン床入れ歯は劣化が早く割れる可能性がありますが、金属床入れ歯は割れる心配がなく、比較的長持ちします。
ピンクや白い部分は欠ける可能性がありますが、素材を選ぶことで入れ歯の寿命を延ばすことが可能です。
金属床入れ歯のデメリット
続いて、金属床入れ歯のデメリットについて解説します。
自由診療で費用が高い
金属床入れ歯は保険が適用されないため、レジン床入れ歯と比べると費用が高くなります。
費用が高いことで、金属床入れ歯を作るか迷う方もいるでしょう。
金属アレルギーの方は素材が限られる
金属床入れ歯は金属が使用されるため、金属アレルギーがある方は注意が必要です。アレルギーが出る金属を調べて、問題のない金属を選びましょう。
使用される金属の種類には、コバルトクロム、チタン、金があります。歯科医院によって取り扱う金属の素材は異なりますので、詳しくは歯科医院で確認しましょう。
細かい調整や修理が難しい
金属床入れ歯は、容易に削れないため修理が難しい面があります。
破損した場合、修理ができないと新しく作らなければいけません。金属床にトラブルが起こらないように、ていねいに取り扱いましょう。
ノンクラスプデンチャー
ノンクラスプデンチャーは、金属のバネがない入れ歯です。入れ歯特有の金属のバネがないので、口を大きく開けて笑っても入れ歯と気付かれにくく、自然な口元になります。全体が弾力のある特殊なプラスチックで、歯にフィットするように作られています。金属床と組み合わせたノンクラスプデンチャーなど自由に設計ができます。以下に、ノンクラスプデンチャーのメリット・デメリットをご紹介します。
ノンクラスプデンチャーのメリット
・金属のバネがないため、入れ歯だと気づかれにくい
・レジンに比べて、汚れや臭いが付きにくい
・金属アレルギーの心配がない
・薄く作れるため、使い心地がよい
ノンクラスプデンチャーのデメリット
・素材が特殊なため、歯科医院での調整が難しい
・歯の残存本数や、噛み合わせによっては作れない場合がある
シリコン入れ歯
シリコン入れ歯は、入れ歯の歯茎にあたる面をシリコンで覆っている入れ歯です。シリコンは赤ちゃんのおもちゃにも使われていて、軟らかく弾力性がある素材です。歯茎に当たったときに痛みを感じにくく、使用感に優れています。
以下に、シリコン入れ歯のメリット・デメリットをご紹介します。
シリコン入れ歯のメリット
・金属のバネを使わずに作製できるため、入れ歯だと気付かれにくい
・歯茎と密着するためしっかりかめる
・歯茎を傷つけにくいため、痛みが少ない
・歯茎に吸着するため、入れ歯が動きにくい
シリコン入れ歯のデメリット
・シリコンは吸水性があるため劣化しやすい
・修理が難しいため、破損すると作り替える必要がある
・シリコン入れ歯専用の洗浄液が必要である
磁石アタッチメント入れ歯
磁石アタッチメント入れ歯は、歯の根っこと入れ歯に磁石を埋め込み、磁石の力で入れ歯を安定させます。磁石の力を利用することで、残っている歯の負担を減らせます。歯の根っこが残っていない場合は、インプラントをしたあとにインプラントに磁石を埋め込み、入れ歯を固定することも可能です。
以下に、磁石アタッチメント入れ歯のメリット・デメリットをご紹介します。
磁石アタッチメント入れ歯のメリット
・保険の入れ歯のような金属のバネがないので、金属が目立たない
・磁石の力を利用するため、安定感があり外れにくい
・磁石でくっつくため、強くかめる
・入れ歯を磁力で固定するため、残っている歯への負担が少ない
磁石アタッチメント入れ歯のデメリット
・歯の根っこがグラグラしていると使用できない
・金属を使用するため、金属アレルギーの方には向いていない
・保険が適用されるが、部位や欠損歯の数など条件がある
まとめ
今回は、入れ歯の素材別に、特徴やメリット・デメリットを解説しました。入れ歯にはさまざまな種類があり、特徴が異なります。個々の悩みを解決できる素材を選ぶことで、入れ歯を長持ちさせて快適に使うことができます。
初めて入れ歯を作るときに素材で迷ったら、まずは保険で作るとよいでしょう。入れ歯の使い始めは異物感が大きいので、多くの方は慣れるのに時間がかかります。初めから自費の入れ歯を作ると、使えなかったときに調整ができず、ムダになるかもしれません。保険の入れ歯である程度慣れたあと、好みに合わせて自費の入れ歯を作製すると、使い心地のよい入れ歯が作れるでしょう。
入れ歯でお悩みがある方は、神戸市東灘区にある木下歯科医院にお気軽にご相談ください。