入れ歯コラムCOLUMN

歯がないまま歯科恐怖症で歯医者に行けない…どうしたらいい?

歯科恐怖症とは?怖くて治療に行けないのはおかしい?

歯科恐怖症とは、歯医者に対して強い恐怖心を持ち、受診をするのが困難な状態のこと。歯科恐怖症は、精神障害の専門分野では注射針など尖ったものの先端を強く恐れる局所恐怖症や、高所や閉所を恐れる限局性恐怖症のひとつとして分類されています。

歯科恐怖症の方は虫歯になっても歯医者に行くことを躊躇してしまうため、気づけば歯を抜かなければいけない程に症状が進行している場合もあります。痛みが出ても市販薬で一時的に抑えることができるので、長年放置してしまうのです。

たとえ決心して来院しても、においや音によって恐怖心が呼び起こされ、担当医の前で口を開けられなかったり、診察台に座れなかったりする方もいらっしゃいます。器具を口に入れられて吐き気を催してしまう嘔吐反射が強い方は、それがトラウマや恐怖となって通院をためらってしまうことも。

一度「歯医者が怖い」と思い込んでしまうと、自力ではなかなか克服できないため、特別なケアが必要になります。

歯科恐怖症になってしまう原因

小さいころ歯医者で怖い思いや痛い思いをした記憶がトラウマとなって歯科恐怖症になってしまう…というケースがほとんど。

  • 電気メスで治療ミスをされた
  • あからさまにいやな顔をされた
  • 痛みを訴えても聞き入れてもらえず我慢した

上記のような幼少期の辛い記憶が歯医者という場所に訪れることで再び呼び起こされ、動機や閉塞感など心身に不快な反応が出ます。ドリルの音や薬品のにおいなどがきっかけとなって症状が現れることも多く、虫歯で悩む患者様にとって受診への大きな障害となっています。

「日本歯科心身医学会雑誌」に寄稿された歯科恐怖に関する記事によると、外国では平均約12%、日本国内でも約8%の人が歯科への強い恐怖を抱いていることが疫学調査の結果から分かっています。

※参照:日本歯科心身医学会雑誌「歯科恐怖を知る-疫学と原因-」
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsd/34/1-2/34_5/_pdf)

歯医者の歯科恐怖症へのケア

最近では、歯科恐怖症の患者様に対して恐怖に対するケアや対策をしている歯医者も多くなってきました。「痛み」に対して麻酔で和らげるという方法は以前から変わりません。しかし麻酔は注射で注入する以外の方法も増えており、注射が怖い・痛いという方でも恐怖を感じにくい麻酔を選べるようになっています。

歯を削る機器からのキーンという独特の音も恐怖を感じさせる一因。音については、以前より音が出にくい機器を導入したり、耳栓やイヤホンを付けてもらった状態で治療をしたりいった方法も可能です。薬品のにおいも恐怖を呼び起こす原因になり得ますが、空気清浄機やアロマディフューザーを置いて、リラックスできる空間づくりを大切にしている歯医者も増えています。

歯医者が怖いという気持ちを持つ患者様がいらっしゃることは多くの歯科医が認識していますし、上に挙げたような対応を取り入れている歯医者も増えています。「治療をしたいけれど、怖い、不安…」というお気持ちがある方は、まずありのままに相談をしてみてください。しっかり話を聞いてくれるか、安心して治療を任せられる先生かどうか、事前に人柄や雰囲気を確認し、自分の恐怖に寄り添ってくれる歯医者を選びましょう。

歯科恐怖症でもできる治療方法とは

歯科恐怖症になってしまう大きな原因が、虫歯治療などに伴う痛み。麻酔によって和らげる、痛みが生じにくい治療を行うなど、なるべく痛みを感じる瞬間を少なくするような対策がとられます。

麻酔の種類

麻酔ひとつとっても以下のような様々な方法があります。

表面麻酔

麻酔薬を歯茎の表面に塗って痛みの感覚を和らげます。麻酔の注射が怖いといった場合には、まず表面麻酔をすると注射の痛みをあまり感じずに注入可能です。

静脈内鎮静法

鎮静剤を点滴することで全身がリラックス状態になり、恐怖や不安を和らげられます。うとうとしたような状態で、ぼんやりとしている間に治療が終わっているという方法です。

痛みも感じにくくなりますが、注射などの局所麻酔とあわせればより痛みを少なくして治療を受けることが可能です。

笑気麻酔

笑気という気体を吸入して行う方法で、血圧や脈拍が安定し、体を鎮静状態にできます。一般的には鼻から吸い込む形で行われ、針を使わずに済む点が特徴です。

局所麻酔

局所麻酔は従来どおり注射で注入する方法。ただし注射機器は進化しており、痛みを感じにくい細い針を用いることができるようになりました。

一般的に点滴などで使われる針は26~27ゲージ(外径0.4~0.45mm)、採血は22ゲージ(外径0.72mm)。それに比べて、歯科麻酔で使える細い針は32~33ゲージ(外径0.23mm~0.2mm)と太さが半分になっています。

痛みの生じにくい治療

麻酔だけでなく、虫歯の治療自体も痛みが少ない方法でできるようになりました。こちらも一例を紹介します。

プラズマレーザー治療

プラズマレーザーを使って、虫歯部分だけを効率的に殺菌する方法。プラズマレーザーの熱エネルギーには神経を一時的に麻痺させる働きがあり、痛みを抑えながら治療できます。

ドックベストセメント治療

歯科用セメントを用いる治療で、虫歯をあまり削ることがないため、痛みをあまり感じずに行える方法です。

歯科用セメントには殺菌作用のある銅イオン・鉄イオンなどが含まれており、虫歯菌を殺菌することが可能。神経に近い虫歯の場合、治療するために神経を抜かざるを得ない場合がありますが、ドックベストセメントであれば残しやすくなります。

ヒールオゾン治療

塩素の7倍と言われる強い殺菌力を持つオゾンを利用する治療法です。

オゾンを照射して行う治療なので痛みがほぼ無く、麻酔も必要ないことがほとんど。神経まで達する深い虫歯であっても、歯を削らずに神経を残したまま治療できるケースもあります。

3Mix法

虫歯を殺菌できる3種類の抗生物質を混ぜた薬剤を使う治療が「3Mix法」。虫歯部分が少し残った状態であってもこの薬剤を虫歯部分に塗ることで殺菌できるので、あまり歯を削らずに治療を行えます。

歯科恐怖症で歯がない…どんな治療法がある?

すでに歯がない状態になっている場合には、主に以下の3つの治療法で無くなってしまった歯の代わりを作ります。

入れ歯

部分入れ歯と総入れ歯の2種類があり、入れ歯の支えになる健康な歯がある場合は、歯がない部分だけを入れ歯で補うことが可能です。

ほとんど歯がない状態や残っていても重度の虫歯になっている場合などは、無理に部分入れ歯にしようとすると入れ歯の構造が複雑化してしまいます。そのため、あえて抜歯をして総入れ歯を作ることもあります。

お口の中の型取りは必要ですが、入れ歯を作る過程では痛みを伴うことはほぼありません。

ブリッジ

ブリッジは、残っている両隣の歯を支えにしてその間に橋をかけるように人工歯を固定する治療法。固定しているため安定はするものの、隣の健康な歯を削る必要があったり、支えの歯に負荷がかかることで欠けてしまったりする場合もあります。

こうしたデメリットに対して、特殊な金具を使って歯をほぼ削らずに行えるヒューマンブリッジという方法が確立されており、リスクを軽減できるようになりました。ブリッジも外科手術などは必要ないため、痛みはほぼありません。

インプラント

インプラントは顎骨を削って人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を固定する治療法。

歯茎を切開して骨を削る外科的手術が必要となり、費用も高額になりますが、他の健康な歯を削る必要はなく、安定性・審美性も高い治療法です。

歯科恐怖症だけではない?心の不調やトラウマによる症状

歯科心身症とは?

歯科心身症とは、心理的な要因でお口の中の疾患や不快な症状が起こることを指します。歯科恐怖症も、この歯科心身症のひとつです。

歯科心身症の症状としてよく見られるのは以下のようなものです。

  • まったく異常がないにも関わらず舌に痛みが続く「舌痛症」
  • 自身の口臭がひどいと思いこみ、周りに迷惑をかけていると悩んでしまう「口臭恐怖症」 など

他にも噛み合わせの違和感がずっと消えない、といった症状がみられることも。こういった症状がストレスになると、歯ぎしりや食いしばる機会が増えてしまい、顎の負担が増えた結果、顎関節症の原因になってしまうこともあります。

心の状態が原因で歯が痛くなることも

まず「痛み」には以下の3種類があります。

  • 侵害受容性疼痛…実際に傷や刺激があって生じる痛み
  • 神経障害性疼痛…神経痛とも言われるもので、神経の傷・障害によって起こる痛み
  • 心因性疼痛…ストレスによって、脳の痛みをコントロールする部分に異常が生じて起こる痛み

上記は痛み全般についての分類ですが、歯の痛みについても「歯原性歯痛」と「非歯原性歯痛」という2種類に分類されています。

「歯原性歯痛」は炎症や傷からくる痛みで、上記の侵害受容性疼痛と同様です。これ以外の原因からくる痛みは「非歯原性歯痛」としてひとまとめにされており、精神疾患や心理社会的要因による心因性の痛みも含まれています。

こういった症状や痛みの治療で行われるのは、歯科診療の他、心理療法や薬物療法といった方法です。原因を絞り込むためにも、痛みがある場合には専門家である歯医者にまず相談してみましょう。

丁寧な診療で恐怖心も和らぐ。歯科恐怖症の方の治療事例

神戸の歯科「木下歯科医院」では、歯科恐怖症の患者様へのケアを重視し、リラックスして治療が受けられる環境づくりをしています。治療においても「痛み」が非常に少なくなるように最大限配慮。涙を浮かべながらも勇気を持って来院してくださった患者様が、安心して治療を進めていただけるように心がけています。

歯科恐怖症の患者様を治療した事例

治療に行けずに、若くして虫歯が重度化してしまった患者様

30代の若い女性の患者様でしたが、歯科恐怖症になってしまったことで虫歯が重度化。来院時には歯がほとんどない状態でした。しかし、相談しながら総入れ歯治療をした結果、今では食事も問題なく楽しんでいただけるようになり、自然な口元になっていただくことができました。

過去の怖い経験を振り切って来院くださった患者様

歯のことでずっとお悩みだった40代の女性の患者様。過去に治療を受けた歯医者で怖い経験をしてしまったことから通院ができず、歯周病が重度化してしまっていました。

当院では医院を貸し切り状態にして、時間をかけてカウンセリングを行っていくことに。じっくりと話し合って打ち解けることができ、最終的には安心して治療を受けていただけました。

グラグラの状態だった歯を抜歯して入れ歯治療を行い、今では自然な笑顔を取り戻されています。

強い恐怖心から口元を隠した状態からスタートした患者様

若い時のトラウマが原因で歯科恐怖症になってしまった40代の女性の方でしたが、恐怖心から最初は口元を隠された状態で治療が始まりました。

全体的に虫歯と歯周病が重度化してしまっていましたが、治療の工程や、その治療で起こる可能性があることを丁寧にご説明。少しずつ治療を進めていき、1年4ヶ月をかけて美しい口元へと治療できています。

木下歯科医院のプライバシーを重視した治療

木下歯科医院では、カウンセリングはすべて院長の木下が行い、一人ひとりの患者様に1~2時間をかけて、じっくりとお話を伺っています。

プライバシーも厳守し、誰とも会わずに治療をすることが可能。来院するのが怖いという方のために、ビデオ通話でのご相談も承っています。ご相談には費用はかかりませんので、ぜひお気軽にご連絡ください。

木下歯科医院では、それぞれの患者様のお口にあわせたオーダーメイドの精密入れ歯治療を得意としています。「歯医者が怖い」「歯がない状態で恥ずかしい」…そんな思いをお持ちの患者様に、自然な口元を取り戻していただいた事例は多数。ぜひ、同じようなお悩みがある方は、治療によってどんな口元になるのか、以下より写真付きの事例をぜひご覧ください。

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医療法人社団 木下歯科医院 
院長 木下 貴雄

  • 国立徳島大学歯学部歯学科 卒業
  • IPSG咬合認定医
  • BPSメンバー(日本第一号となる精密入れ歯国際ライセンス認定歯科医師)