こんにちは。神戸市東灘区にある木下歯科医院です。
「入れ歯の方は誤嚥しやすくなる」と聞いたことはありませんか。入れ歯と誤嚥には関わりがあるのか、入れ歯を使用している方なら気になるでしょう。
本記事では、入れ歯と誤嚥の関係性や誤嚥を防ぐ方法などを解説していきます。
誤嚥とは?
誤嚥(ごえん)とは、飲食物や唾液が何らかの理由で気管に入り込むことを指します。飲み込む動作は嚥下(えんげ)と呼ばれていますが、飲食物や唾液を嚥下すると食道に送られるのが通常の反応です。
しかし、誤嚥すると気管に飲食物や唾液などが流れ込みます。誤嚥は老若男女どなたにでも起こりますが、通常は気管に異物が入ると、咳をする・むせるなど、身体の防御反応で気管の外に吐き出されます。
高齢になると外に吐き出す力が弱まるため、飲食物や唾液などの異物が気管に残った状態が続くことがあるのです。誤嚥で大きな固形物が気管に入り込んでしまうと、呼吸困難や窒息の恐れがあります。
嚥下機能が弱まっている場合は、日頃から注意しなければなりません。
誤嚥性肺炎とは?
誤嚥性肺炎は、誤嚥した飲食物や唾液が原因で細菌が繁殖して起こる肺炎をいいます。高齢者が肺炎になると命にかかわる場合もあるため、誤嚥性肺炎を起こさないように対処することが大切です。
誤嚥は、起床時のみならず就寝中に唾液が流れ込んで起こる場合もあります。
ただし、誤嚥した方すべてが誤嚥性肺炎になるわけではありません。本人の免疫力や誤飲した量・誤嚥したときの反射反応の有無によって異なります。食事中に咳き込んだりする方は、嚥下能力が低下しており誤嚥するリスクが高くなっている可能性があるでしょう。
誤嚥性肺炎に罹患すると咳や痰・発熱などの症状がみられます。重症化すると呼吸困難などの症状がみられるため早めに対処しなければなりません。
誤嚥性肺炎は、抗生剤の服薬や必要に応じて痰の吸引などをおこなって治療していきます。
高齢者の場合、自覚症状がなく気がついたときには重症化していることも少なくありません。肺炎は日本人の死因3位に入るため、日頃から異常がないか体調や些細な変化に注意しましょう。
入れ歯と誤嚥には関係がある?
入れ歯は、失った歯を補い、食べ物を噛み切ったり擦り潰したりする役割を果たします。一般的には、口内に合った入れ歯を装着すればしっかりと噛めるようになるため、スムーズに食事できるでしょう。
ただし、嚥下能力が低下した方が入れ歯をする際には、誤嚥に注意する必要があります。嚥下は、舌を上顎に押し付けるようにして喉の奥に飲食物や唾液を流し込む動作です。
しかし、上下に入れ歯が入っていると、舌の動きが制限されます。上手く嚥下することが難しくなるでしょう。
嚥下能力が低下している場合、大きな入れ歯はもちろん、破損した入れ歯やすり減っている入れ歯も、スムーズな嚥下を阻害する要因になります。また、入れ歯を使用している方は、使用していない方と比較して誤嚥性肺炎のリスクが高いといわれています。
入れ歯は、ご自身の歯と比較して表面が粗造なため、食べカスやプラークが残りやすいです。入れ歯の手入れを怠っていると、入れ歯の表面に多くの食べカスやプラークが残って口の中の細菌の数が多くなるでしょう。
誤嚥した際に、多くの細菌が気管に入り込むリスクがあります。細菌数が多いと肺炎になるリスクも高くなるため、入れ歯を使用している方は入れ歯の手入れも必要不可欠です。
入れ歯による誤嚥・誤嚥性肺炎を防ぐ方法
入れ歯は歯の機能を回復させるために必要な治療です。
しかし、入れ歯が原因で誤嚥や誤嚥性肺炎を引き起こすリスクがあるのは事実です。ここでは、入れ歯による誤嚥や誤嚥性肺炎を防ぐ方法をご紹介します。
・嚥下能力に合わせた食事をする
・最初は上の入れ歯だけ装着する
・食事中の姿勢や環境に気をつける
・唾液の分泌量を増やす
・口内を清潔に保つ
・入れ歯の種類を検討する
それぞれ解説します。
嚥下能力に合わせた食事をする
咀嚼が十分にできていない状態で食べ物を飲み込もうとすると、誤嚥するリスクが高くなります。嚥下能力が低下している方は、硬い食べ物やパサパサした食べ物は避けましょう。
固形物は細かく刻んだり、水分が少ないものはとろみを付けたりして工夫すると誤嚥のリスクを下げられます。
最初は上の入れ歯だけ装着する
入れ歯を初めて装着する場合や新製する場合には、上の入れ歯に慣れてから上下の入れ歯を装着しましょう。入れ歯をした状態で嚥下する動作に慣れることが大切です。
舌を上あごに押し付けて上手く飲食物が流し込めるようになるまで、食事内容も工夫しながら練習しましょう。上の入れ歯に慣れてスムーズに嚥下できるようになったら、上下の入れ歯を入れて様子をみることで誤嚥の危険性を軽減できます。
食事中の姿勢や環境に気を付ける
食事の姿勢や環境を注意するだけでも、誤嚥のリスクを軽減できます。食事中は座って背中が真っ直ぐの状態を保つと、舌に力を入れやすくなるため嚥下しやすくなるでしょう。
姿勢を正して足を床にしっかりと付けて食事をすると、嚥下の際に使われる筋肉が上手く働くといわれています。嚥下能力が弱まっている方は、食事中の姿勢も意識しましょう。
テレビを見ながら食事をするなど、ながら食べをすると咀嚼回数が減少して誤嚥するリスクが高くなります。食事する際には、食事に集中できる環境を整えることも大切です。
また、誤嚥は口から入った物だけで起こる訳ではありません。食後すぐに横になると胃から食べ物が逆流して、誤嚥を引き起こす可能性があります。可能であれば食後すぐに横にならないようにしましょう。
唾液の分泌量を増やす
スムーズに嚥下をおこなうためには、食べ物を細かく噛み砕き1つの塊(食塊)を作って流し込む必要があります。その際、唾液の分泌が不十分だと食塊をつくることが難しくなります。
高齢者は、唾液の分泌量が少なく口内が乾燥しやすいです。食塊を作りにくいので、誤嚥が起こりやすいのです。
こめかみや下あごにある唾液腺をマッサージして、普段から唾液の分泌を促進しておくと良いでしょう。
口内を清潔に保つ
誤嚥性肺炎の原因は口の中の細菌です。口の中の細菌が多いと、誤嚥した際に多くの細菌が気管に入り込むため、誤嚥性肺炎のリスクが高くなるでしょう。
口の中の細菌の数を減らすことが誤嚥性肺炎を予防する有効な手段になります。細菌の多くはプラークの中で生息しています。日々のセルフケアや歯科医院の定期メンテナンスでプラークや歯石を除去して清潔な口内を保ちましょう。
また、入れ歯もご自身の歯と同様にプラークや歯石が付着します。保険適用の入れ歯はプラスチックでできているため、ご自身の歯と比較してプラークが付着しやすいです。
食後は外してしっかりと洗浄し、清潔な状態を維持しましょう。特に、金属のバネ部分などはプラークが残りやすいため、ブラシを使って丁寧に洗ってください。
入れ歯の種類を検討する
保険適用の入れ歯は、プラスチック製なので破損を防ぐため厚く作る必要があります。厚みがある分、装着時の違和感が大きく舌の動きにも制限が出るでしょう。
入れ歯の厚みが原因で誤嚥しているケースでは、入れ歯の種類を変えてみるのも有効な手段です。金属床など厚みが少ない入れ歯を使用すると、舌を動かしやすくなるためスムーズに嚥下できかもしれません。
まとめ
入れ歯をしている方は、入れ歯を使用していない方と比較して誤嚥や誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高いです。誤嚥を防ぐだめには、口内に合った入れ歯を使用することはもちろん、食事内容や食事中の姿勢などにも気を配る必要があります。
また、誤嚥性肺炎の原因は口の中の細菌です。日頃のセルフケアや歯科医院でおこなう定期メンテナンスで、口内のプラークを減らすことが大切でしょう。入れ歯にも食べカスやプラークが付着するため、入れ歯もご自身の歯と同じようにお手入れが必要です。
入れ歯は、失った歯を補うために必要な治療です。入れ歯による誤嚥や誤嚥性肺炎を防ぐためには、適切な取り扱い方法を理解しましょう。
入れ歯を検討している方は、神戸市東灘区にある木下歯科医院にお気軽にご相談ください。