こんにちは。神戸市東灘区にある木下歯科医院です。
むし歯や歯周病などが原因で奥歯が抜けてしまうことがあります。その際に「奥歯は見えないからそのままにしておく」「前歯で噛めるから大丈夫」などと放置していると審美面や機能面に影響が出ることは否めません。決して放置せずに、早期に治療することが大切です。
今回は、奥歯が抜けたときの治療法や、治療法のひとつである部分入れ歯の費用について解説します。
奥歯の役割とは
歯は一般的に、前歯・小臼歯・大臼歯と分けられています。奥歯とは、前から4,5番目の小臼歯と前から6、7番目の大臼歯のことを指します。
奥歯には以下のような役割があります。
・噛み合わせを安定させる
奥歯は大きく噛む力が強いため、食事や咬み合わせに関して重要な役割を果たしています。前歯だけでは食べ物を噛み切ることはできても、すりつぶして小さくすることはできません。また、奥歯を含めた上下の歯が噛み合うことで、噛み合わせの高さを保ち安定させています。
奥歯が抜けたままの状態で起こり得るリスク
奥歯が抜けたまま放置していると、さまざまな悪影響が起きることがあります。健康に支障が出ることもあるため、奥歯が抜けていることのリスクを理解し、早期に治療することが大切です。奥歯が抜けたままの状態で起こり得るリスクは、以下のとおりです。
・残りの歯に負担がかかる
・噛む力が低下する
・顎関節症などを引き起こす
・顔の輪郭が変わる
・発音しにくくなる
それぞれを解説していきます。
歯並びが崩れる
奥歯が抜けたままの状態だと、残っている歯が奥歯の抜けたスペースに動き、歯並びが崩れることがあります。本来、奥歯は上下の歯が噛み合った状態にあります。
しかし、上下どちらか片方の歯が抜けたまま放置していると、もう片方の歯が空いたスペースに伸びるように出てくることがあります。特に下の奥歯が抜けた場合、噛み合う上の歯が伸びるように動くことが多いです。また、抜けた歯の両端の歯が傾いて倒れたり、空いたスペースに寄って動いたりすることも起こります。ほかの歯並びが崩れる原因になるため、歯が抜けたまま長期間放置するのはやめましょう。
残りの歯に負担がかかる
奥歯が抜けてなくなると、残った歯に負担がかかることがあります。本来、歯は噛む力をすべての歯に分散することでバランスを保っています。奥歯がないことで、奥歯が担っていた力をほかの歯が負担しなければなりません。特定の歯に負担がかかり過ぎると、歯がグラグラしたり歯茎に炎症が起きたりといった症状を引き起こします。最悪の場合、抜けてしまうこともあるため注意が必要です。
噛む力が低下する
奥歯を1本失うだけで噛む力は30〜40%低下するといわれているほど、奥歯は重要な役割を果たしています。噛む力が低下すると、食べ物を十分に噛み砕くことができず飲み込むため胃腸に負担がかかります。また、よく噛むことは、脳に刺激を与え活性化されるといわれています。噛む力が低下することで、脳の老化が加速することが懸念されるため注意が必要です。
顎関節症などを引き起こす
奥歯がないことで噛み合わせのバランスが崩れ、顎関節症や肩こり、頭痛といった症状を引き起こすことがあります。噛み合わせのバランスが崩れると、やがて顎関節に大きな負担がかかります。大きな口が開けられない、顎が痛いといった症状のほかにも、肩こりや頭痛など身体への影響も否定できません。
顔の輪郭が変わる
奥歯がないことで顔の輪郭に変化があらわれる可能性があります。頬がこけて見えたり口元にシワができたりと、老けた印象を与えかねません。
発音しにくくなる
発音に影響を与えるのも、奥歯が抜けたままでいることで起こり得るリスクのひとつです。奥歯がないことで隙間から空気が漏れて発音が不明瞭になります。特に「き」や「し」などの「イ音」に影響が出ることが多いでしょう。
奥歯が抜けたときの治療法
奥歯が抜けたときの治療法は、主に以下の3つがあります。
・ブリッジ
・インプラント
見た目の違いはもちろん治療期間や耐久性などさまざまな違いがあるため、自分に合った治療法を選択することが重要です。
<入れ歯・ブリッジ・インプラントの違い>
入れ歯 | ブリッジ | インプラント | |
---|---|---|---|
治療期間 | 2~3ヶ月ほど | 1~3ヶ月ほど | 3ヶ月~1年ほど |
保険適用 | 保険適用(使う材料によっては保険適用外になる) | 保険適用(使う材料によっては保険適用外になる) | 保険適用外 |
費用の目安 | 保険適用:1本4,000〜6,000円 保険適応外:70,000〜200,000円 | 保険適用:3本5,000〜15,000円 保険適用外:3本150,000〜450,000円 | 保険適用:なし 保険適応外:1本300,000〜500,000円 |
耐久性(平均寿命) | 4~5年ほど | 7~8年ほど | 10~15年ほど |
審美性 | 審美性はやや劣る | 比較的、審美性に優れている | 審美性に優れている |
周りの歯への影響 | バネをかける歯に負担がかかる | 支えになる歯にかかる負担が大きい | なし |
保険適用 | 保険適用(使う材料によっては保険適用外になる) | 保険適用(使う材料によっては保険適用外になる) | 保険適用外 |
入れ歯
入れ歯は、失った歯の部分を人工歯で補う方法です。奥歯が抜けた場合は、残った歯に支えとなるバネをかける部分入れ歯となります。バネが安定しやすいように溝となる部分を多少削ることはありますが、残った歯を大きく削る必要はありません。入れ歯であれば、歯を失った本数や場所に関係なく対応できるのは大きな利点です。失った歯の本数が多いほど、入れ歯の面積は大きくなり、異物感や違和感をもつ方が多い傾向にあります。
ブリッジ
ブリッジは、失った歯の両隣にある歯を支えとして、橋渡しをするように複数本一体型の人工歯を装着する治療法です。入れ歯のように取り外しをする必要がなく、噛み心地も天然歯と同様に行えます。 ただし、支えになる歯は健康な状態でも削らなければならず、噛む力は失った歯の分も負担しなければなりません。また、失った歯が一番奥である場合は、ブリッジ治療が基本的にはできません。その手前の歯を削り支えとする延長ブリッジと呼ばれる方法もありますが、支えとなる歯の負担はより大きくなります。インプラント
インプラントは、失った歯の顎骨部分にチタンなどでできた人工歯根を埋め込み、それを土台として人工歯を装着する治療法です。見た目や噛む力は天然歯と同様で、装着したときの違和感はありません。
ただし、人工歯根を埋め込むための外科的手術が必要であり、保険適用外の治療となるため費用が高額です。また、上の奥歯を失った場合は、インプラント治療が難しいと診断される場合があります。上の奥歯部分の骨は薄いことが多く、人工歯根を埋め込めない可能性があるからです。
奥歯を部分入れ歯にするときにかかる費用
奥歯を部分入れ歯にするときの費用は、失った歯の本数や使用する材料・素材によって大きく異なります。また、治療法や使用する材料・素材で保険適用の有無が決まります。
保険適用と保険適用にならない自費の部分入れ歯を比較した表は、以下のとおりです。
<保険適用と自費の部分入れ歯の違い>
保険適用の部分入れ歯 | 自費の部分入れ歯 | |
---|---|---|
費用 | 比較的安価 | 高額になることが多い |
審美性 | 劣る | 優れている |
装着時の違和感 | 違和感や異物感をもちやすい | 違和感や異物感なく装着できることが多い |
使用する材料・素材 | 素材はプラスチック製で、人工歯の色も限られたものから選択する | 素材や色など機能性・審美性に優れたものを選択できる |
自費の部分入れ歯は、審美性・機能性に優れているのが特徴です。金属床義歯は、強度があり熱伝導が良いため、食事のときの温度感覚が天然歯に近づきます。部分入れ歯のバネが気になる方は、審美性に優れたノンクラスプ義歯が向いています。コンフォート義歯は、歯茎に対する安定性が高いのが特徴です。
費用相場は、保険適用の義歯と比較するといずれも高額になります。金属床義歯は、使用する金属の種類によっても費用が異なるため事前に確認すると良いでしょう。
まとめ
奥歯が抜けたときの治療法には、部分入れ歯をはじめ、ブリッジやインプラントがあります。費用はもちろん、審美性や機能性においてさまざまな違いがあるため、比較検討のうえ自分に合った治療法を選択することが大切です。それと同時に、歯が抜けたまま放置していると、最終的には健康に支障をきたすリスクが生じる可能性があります。長期間放置することは避け、早期に治療しましょう。
入れ歯を検討している方は、神戸市東灘区にある木下歯科医院にお気軽にご相談ください。