医院ブログBLOG

摂食、咀嚼、嚥下について

2018年11月20日

先日、東京にて摂食咀嚼嚥下、という内容にポイントを絞った研修会に参加して参りました。
歯医者と言いますと、歯だけを診ている様に思われますが、近年特に注目されている高齢者の誤嚥性肺炎や、摂食嚥下障害、また小児矯正治療における正常な成長発達の分野において、この摂食、咀嚼、嚥下という一連の動作の重要性がトピックになっております。
人間の生きる根源である、食べるという行為を細かく分けますと、摂食(口の中に入れその温度や味や硬さを感じ)、咀嚼(歯を使って切り潰して消化吸収しやすい形に変化させ)、嚥下(食道を通して胃袋へと飲み込み運んでいく)、という流れになります。
そもそも生まれたばかりの赤ん坊にとっては、母親の母乳を吸うという行為が毎日の大切な仕事です。この時赤ん坊は全身の筋肉を総動員して、飲み込み、呼吸し、生きていく上で必要な様々な基本的なことを学習していきます。
これが、文明の発展や核家族化、夫婦共働きなどの影響によって、早い時期の卒乳や、短時間で流し込まれてしまう様な哺乳瓶が生まれました。
これによって、顎の発達や正常な呼吸や嚥下の未成熟な子供が増え、歯列の不正や呼吸不全、アレルギーやアトピーなどを生んでいるのではないかと考えられています。
この概念を高齢者医療に置き換えますと、誤嚥性肺炎で長期的な入院をされておられる方に、口腔周囲筋肉のリハビリテーションを行うことよって、生きていく上で大切な呼吸や嚥下の機能が復活し、肺炎の早期回復や予防に繋がります。
また、結果として人間としての生きる根源的な力が蘇りますので、動かなかった手足が動く様になったり、車椅子なしで歩くことができる様になる事例が出てきています。
つまり、「命の入り口である口」にはまだまだ沢山のやるべきことがあり、可能性が沢山詰まっているのではと思います。
当院でも口を通した全身的な治療に力を入れて取り組んでおりますが、より一層知見を深めていきたいと思います。