総入れ歯を入れっぱなしにして寝てはダメ?
「入れ歯は外してから寝るもの」というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、実は入れ歯を入れたまま就寝することを推奨される場合もあります。総入れ歯を入れっぱなしで就寝すると、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
総入れ歯を入れっぱなしにするメリット
①噛み合わせが安定する
総入れ歯を使用される方の中には、噛み合わせが不安定な方も多くいらっしゃいます。日中だけでなく就寝中も入れ歯を使用することで、本来の嚙み合わせを保持して顎を安定させることが可能になります。
②災害時に持ち出すのを忘れない
地震大国と言われる日本において、寝ている間も災害が起こることを想定しておく必要があります。東日本大震災や阪神淡路大震災が発生した際に、入れ歯を持たずに避難したことで食事ができなくなってしまったという方が多くいらっしゃいました。寝ている間も入れ歯を入れっぱなしにすることで、突然災害が起きても入れ歯を置き忘れるリスクを減らせるのです。
③家族に歯がない状態を見せずに済む
日本においては多くの方が「入れ歯は外してから寝るもの」というイメージをお持ちです。一方で、日本と同様医療先進国であるドイツでは、「夜寝ている間に歯がない状態を家族に見られたくない」という方が多いことから、夜も入れ歯をつけたまま就寝することを推奨しています。安全な素材で作られた入れ歯を使用し、適切にブラッシングを行ったり入れ歯洗浄剤を使用したりすれば、入れ歯を入れたまま眠っても不衛生ではない、という考え方もあるのです。
総入れ歯を入れっぱなしにするデメリット
総入れ歯を入れっぱなしで就寝するデメリットは、口の中が不衛生な状態になりやすいという点にあります。総入れ歯の方でなくても、就寝中の口の中は虫歯菌や歯周病菌が繁殖しやすい状態。お手入れがしっかりされていない入れ歯を入れっぱなしにすると、さらに細菌の繁殖を加速させてしまう可能性があるのです。
入れっぱなしがOKか否かは、状態によって異なる
就寝中も入れ歯を装着したままにしていいかどうかは、歯科医師によって意見が分かれるところです。
肯定派の意見には、次のようなものがあります。
- こまめに適切な洗浄を行っていれば不衛生になることはない
- 噛み合わせを安定させるためにも継続使用が必要
- 噛み合わせの状態によっては、外した方が歯茎を傷つけない場合がある
一方、否定派の意見は以下のようなものです。
- 歯茎を傷つけたり入れ歯を破損させてしまったりするリスクがある
- 細菌が繁殖することで、炎症や誤嚥性肺炎の原因になる可能性がある
- 歯茎には日中大きく負担がかかっているため、就寝中に休ませてあげた方がいい
このように、就寝中も入れ歯を使用しても大丈夫かどうかは、医師の見解だけでなく、患者様ご自身の歯茎や噛み合わせの状態による部分が大きいことがわかります。普段の具体的な使用方法や洗浄方法・頻度と合わせて、担当の歯科医師としっかり相談することが大切だと言えます。
入れっぱなし・外す、どちらにしても必要な総入れ歯のお手入れ法
総入れ歯を入れっぱなしにする場合でも、外す場合でも、大切な入れ歯を長く快適に使用し続けるためには、日頃のお手入れとメンテナンスが不可欠です。
総入れ歯の洗浄の仕方
総入れ歯の洗浄は毎食後行うのが理想。洗面器に水を張り、その上で入れ歯用のブラシで優しく磨きましょう。
就寝前にはブラッシングに加えて、入れ歯洗浄剤の中に浸けておきます。入れ歯を外して就寝する場合は一晩、入れ歯を入れたまま就寝する場合は1時間を目安に浸けるようにしましょう。殺菌効果のある入れ歯洗浄剤を選ぶと、虫歯や歯周病の原因となる細菌の繁殖を抑えられるためおすすめです。
総入れ歯の保管方法
就寝時に入れ歯を外す場合は、入れ歯が乾燥して変形しないように保管する必要があります。入れ歯洗浄剤に浸けておくのはもちろん、外泊等で入れ歯洗浄剤を準備できない場合は、濡れたティッシュペーパーで包んで保管しておくのもおすすめです。
総入れ歯のメンテナンス
総入れ歯は毎日使用する中で、少しずつすり減ったり変形したりします。また、顎や歯茎といったお口の中の状態も、総入れ歯を使用していくうちに少しずつ変化していくものです。そのため、長く快適に、お口にぴったりと合った入れ歯を使用するためにも、歯科医院での定期的なメンテナンスが必要不可欠です。
ご自身では問題なく使用できていると感じておられる場合でも、実は気づかないうちにお口の中の状態が変化しているというケースも少なくありません。できれば2~3ヶ月に1回、最低でも1年に1回を目標に定期検診を受けるようにしましょう。
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