入れ歯コラムCOLUMN

入れ歯が認知症の予防になる?噛むことと認知症の関係について解説

こんにちは。神戸市東灘区にある木下歯科医院です。
上下の入れ歯

「自分で噛めなくなったら認知症になってしまうのか」「入れ歯で認知症予防ができるというのは本当か」などと悩んでいる方がいらっしゃるのではないでしょうか。噛むことと認知機能には、密接な関わりがあります。自分の歯がなくても、入れ歯によって噛む力を維持することで、認知症予防の効果が期待できます。

この記事では、噛むことと認知症の関係や、入れ歯が認知症予防になる理由について解説しています。この記事を参考に、ご自身や周囲の方が入れ歯を利用する際の参考にしてください。

認知症とは

カレンダーを指差す高齢男性

認知症とは、認知機能の低下が記憶力や判断力に影響を及ぼし、日常生活に支障をきたす病気です。認知症の原因はさまざまですが、加齢や脳卒中などの血管系の病気などが挙げられます。また、高血圧や糖尿病などの生活習慣病をもつ人は、健康な人に比べて、アルツハイマー型認知症を発症するリスクが高いといわれています。

2020年における日本の65歳以上の認知症患者は、推計で約600万人です。また、今後の予想として、2025年には65歳以上の5人に1人、2060年には3人に1人が認知症になるとされています。
認知症にはさまざまな種類がありますが、代表的なのは「アルツハイマー型認知症」です。アルツハイマー型認知症は、記憶力に障害をきたすのが特徴的な疾患で、最近の出来事をそっくり忘れてしまったり、親しい人の名前が思い出せなくなったりします。

噛むことと認知症の関係

PCの前に表示されたデジテルの「脳」

「噛む」というプロセスと認知症の密接な関わりは、以下の4つから説明できます。

・脳の血流量を増やす

・栄養状態を保つ

・口全体の機能を保つ

・転倒予防になる


ひとつずつ解説していきます。

脳の血流量を増やす

食事の際によく噛むと、脳の血流量が増加します。噛むことで、歯を支える「歯根膜」の下にある血管が収縮し、血液が脳に送られます。脳に血液が送り込まれると、脳はそれを刺激として受けとめるため、噛むほどに脳は活性化されていくのです。

噛むことと認知症の関係を裏付けるように、歯を失っても歯科受診せず、そのままの状態にしている人は、歯を20本維持している人と比較して、認知症になるリスクが約2倍高いと明らかにされています。また、自分の歯を失っても、入れ歯を使用して噛み合わせを維持している人は、認知症のリスクが軽減することもわかっているのです。

しかし、歯が残っていても、歯周病などによりグラグラした状態で噛んでいては、脳への刺激になりません。重要なのは歯の有無ではなく、入れ歯であっても「しっかり噛めている」ことです。そのため、歯を失ったときや歯がグラグラしているときは、放置せずに歯科医院を受診し、適切な処置を受けましょう。

栄養状態を保つ

噛むのが重要な理由は、栄養状態を良好に保つ役割を担っているからです。
歯を失ったり歯がグラグラしていてよく噛めないと、柔らかい食べ物を好んで食べたり、麺類などの炭水化物の摂取量が増えたりします。噛み応えのある肉や野菜、繊維質の多い食品を避けるようになるため、栄養状態が悪化していくのです。

また、よく噛まずに飲み込むことで、高血糖や肥満の原因になり、糖尿病や高血圧をはじめとした生活習慣病のリスクが高まっていきます。糖尿病や高血圧は認知症のリスクを高めることがわかっています。そのため、よく噛んでよい栄養状態を保つことは、認知症予防につながるといいえるでしょう。

口全体の機能を保つ

食事をとるときには、歯で噛むだけではなく、頬の筋肉や舌、唇を同時に動かしながら、食べ物を小さくかみ砕き、飲み込んでいます。
噛む力が低下すると、歯以外の動きも弱まり、脳への刺激が少なくなってしまうのです。また、歯を失うことにより、呼吸や発音などの機能も衰えてしまいます。その結果、認知機能の低下を引き起こすのです。

転倒予防になる

歯を失ったままにしておくと、転倒のリスクが最大で2.5倍まで上昇することがわかっています。歯を失った状態では、体のバランスが取りづらく、歯を噛みしめて踏ん張る力が出しづらいためです。
高齢者が寝たきりになる原因のひとつに、転倒があります。転倒により骨折すると、入院による環境の変化や運動機能の低下により、認知機能が低下してしまう場合があるのです。

入れ歯が認知症の予防になるって本当?

脳の模型が置かれたテーブルで医師がカルテを書いている

入れ歯が認知症の予防につながる理由は、以下の3つです。

・脳が活性化する

・糖尿病や高血圧の予防になる

・噛み合わせの回復ができる


ひとつずつ解説していきます。

脳が活性化する

歯や入れ歯を使ってしっかり噛むと、歯根膜の下にある血管が収縮するため、脳への血流が促進され、脳が活性化します。その結果、記憶に深く関係する「海馬」の細胞が回復するといわれています。

また、噛むときには顎を動かすため、口の周りの筋肉が動かされ、血流がよくなります。そのため、血流に乗って脳へ栄養や酸素が行き届くのです。また、よく噛んで食べることで、唾液の分泌が促進され、味覚もさえます。味覚への刺激が敏感になることで、脳の広い範囲が活性化し、認知症予防につながるのです。

糖尿病や高血圧の予防になる

糖尿病や高血圧は、認知症の危険因子であると明らかになっています。これらの疾患は脳の血管に障害を起こしやすくするため、アルツハイマー型認知症などのリスクが高まるのです。
よく噛まずに食事をすると、血圧上昇や血糖上昇と関連することがわかっています。また、噛む力が低下している人は血糖コントロールに乱れが生じるため、よく噛むことが食後の高血糖を抑えることにつながります。その結果、高血圧や高血糖の予防につながり、認知症のリスクも軽減できるでしょう。

噛み合わせの回復ができる

入れ歯は、噛む力を維持し、残された歯の保定装置としての役割を果たします。
歯を失うと、失った歯だけではなく、噛んだときに噛み合う歯や隣り合った歯にも影響を及ぼします。歯は、空いたスペースに移動する習性があるため、歯を失ったままにしておくと歯並びが乱れていき、噛み合わせがずれてしまうでしょう。
入れ歯を入れることで、残された歯が動かないようにする「保定装置」としての役割も果たし、噛み合わせの回復ができるのです。噛み合わせが悪いと、噛む力が弱くなり、脳への血流が低下するため、認知機能に影響を及ぼす可能性があります。

しかし、入れ歯による噛み合わせの回復は、噛む力の低下を防ぐため、認知症の予防につながるのです。入れ歯は噛む力が1/3程度になりますが、重要なのは「よく噛んで食事ができること」です。歯を失ったら放置せず、歯科医院に相談しましょう。

まとめ

高齢男性と看護師が話している

今回は、噛むことと認知症の関係や、入れ歯が認知症予防になる理由について解説しました。

認知症とは、認知機能の低下が記憶力や判断力に影響を及ぼす病気で、その発症は噛む力の低下とも関連があると考えられています。噛むことは、脳の血流量を増やしたり、栄養状態を良好に保ったりして、認知機能を保つ役割を果たしているのです。
また、入れ歯によって噛む力が回復することで脳が活性化され、また糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予防になり、認知症のリスクも軽減できます。

入れ歯に抵抗があったり手入れが面倒だったりして、歯を失ったままにしていると、認知症のリスクを高めてしまいます。本人だけではなく、周囲もサポートしながら入れ歯を活用し、認知機能を保てるような生活をすることが認知症予防につながっていきます。ぜひ前向きに入れ歯の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

入れ歯を検討している方は、神戸市東灘区にある木下歯科医院にお気軽にご相談ください。