入れ歯コラムCOLUMN

総入れ歯はどのように固定される?安定剤の必要性も解説!

こんにちは。神戸市東灘区にある木下歯科医院です。
総入れ歯

総入れ歯は、上下の顎のどちらか、もしくは上下の顎ともに1本も歯がなくなってしまった場合に用いられる入れ歯です。歯がない状態で入れるので、支えがありません。支えがない中、どのようにして固定されているのでしょうか。

今回は、総入れ歯が固定される仕組みと、安定剤の必要性について詳しく解説します。

総入れ歯はどのように固定される?
総入れ歯

総入れ歯の場合は、固定源にする歯がないので歯ぐきや粘膜に固定します。

上顎の総入れ歯の固定方法

上顎の総入れ歯は、支えにできる歯がなく重力の影響を受けるので安定させるのが困難です。そのため、入れ歯の床部分を大きく作ります。

吸盤がくっつくのと同じ要領で、上顎の粘膜にぴったりと吸着するように固定します。

下顎の総入れ歯の固定方法

下顎の総入れ歯の場合も、支えになる歯はありません。歯ぐきの土手を覆うように入れ歯の床が作られ、吸着させて固定します。

上顎の総入れ歯よりも面積が狭いため、吸着力は弱くなります。

総入れ歯が外れるときに考えられること
入れ歯が外れた人

総入れ歯は固定源とする歯がないので、些細なことで入れ歯が外れる場合があります。考えられる原因は、次のとおりです。

入れ歯の面積が小さい

総入れ歯は、粘膜に吸着することで固定されています。そのため、入れ歯が粘膜に吸着する面積が小さいと、吸着力が十分に得られず外れる原因になります。

入れ歯の面積が大きすぎる

入れ歯の面積が大きすぎる場合も、外れやすいです。入れ歯が大きすぎて粘膜の動く部分にまで乗っていると、粘膜と一緒に入れ歯も動くためです。

噛み合わせに問題がある

噛み合わせが悪い場合も、入れ歯が外れやすいでしょう。噛んだ時にバランスが崩れることで、口の動きと入れ歯の動きが合わなくなるためです。

歯ぐきが痩せる

長期間入れ歯を使っていると、歯ぐきが徐々に痩せていきます。歯ぐきが痩せると粘膜も変形するため、入れ歯と歯ぐきとの間に隙間ができて入れ歯が外れやすくなります。

また、体重が大幅に減った場合も歯ぐきが痩せることがあります。

唾液が少ない

唾液には、入れ歯を粘膜に吸着しやすくする役割があります。唾液の量が少ないと、入れ歯が粘膜に吸着しにくいため外れやすいです。

唾液は加齢や飲んでいる薬の副作用によって減少することがあります。

総入れ歯を固定させるためのポイント
総入れ歯を固定するポイントのイメージ

入れ歯がすぐに外れると、食事や会話をするうえで不便です。総入れ歯をしっかり固定させるためのポイントを解説します。

入れ歯の大きさを調整する

入れ歯が小さすぎたり大きすぎたりする場合には、入れ歯の大きさを調整しましょう。そうすることで、総入れ歯が固定されやすくなります。

入れ歯は歯科用プラスチックのレジンという材料で作られており、大きさの調整は難しくありません。入れ歯が小さすぎる場合には材料を足し、大きすぎる場合には削って調整します。

噛み合わせの調整をする

入れ歯の噛み合わせが悪い場合には、噛み合わせの調整をします。口の中に強く当たる所があれば削り、全体でしっかり噛めるようにします。

総入れ歯は、前歯で強く噛むと後ろから空気が入り込んで外れます。前歯で強く噛む癖がある場合は直しましょう。

入れ歯の内面をぴったり合わせる

歯ぐきが痩せて入れ歯の内面が空いてしまった場合は、入れ歯の内面に材料を足してぴったり粘膜に合うように修理します。入れ歯が古くなっている場合には、作り直したほうが良い場合もあります。

唾液の分泌を促す

唾液の量が少なく、入れ歯が固定されにくい場合は唾液の分泌を促しましょう。唾液腺マッサージをすると、改善されることがあります。

また、薬の副作用などでどうしても唾液量が増えない方もいるでしょう。ジェルやスプレータイプの人工唾液を使用したり、水分をこまめに補給をしたりすることが大切です。

唾液腺マッサージの方法

唾液腺は耳下腺、顎下腺、舌下腺の3種類あり、左右対に6箇所あります。それぞれ5回から10回ずつ、優しくマッサージしましょう。継続することで、唾液が分泌されやすくなります。

耳下腺は、耳たぶの前、上の奥歯辺りの頬部分にあります。親指以外の4本の指を使って円を描くように優しくマッサージしましょう。

顎下腺は、顎の骨の内側の柔らかい部分にあります。後ろから前に向かって、両手の親指などを使って優しく押すようにマッサージしましょう。

舌下は、顎先の下の内側にあります。両手の親指を使って、優しく押すようにマッサージしましょう。

総入れ歯を固定させるために安定剤は必要?
総入れ歯

入れ歯がお口にしっかりと合っている場合は、安定剤を使う必要はありません。入れ歯が合わないと感じたら、まずは歯科医院を受診して合わない部分を調整しましょう。入れ歯が合わなくても、安定剤を使うと装着することはできます。

しかし、そのまま使い続けると次第に入れ歯のズレが大きくなり、修正が難しくなるリスクがあります。安定剤に頼る前に、歯科医院を受診しましょう。

どうしても安定剤を使用する必要がある場合には、歯科医院に相談してください。

入れ歯安定剤のデメリット

入れ歯安定剤は便利なアイテムですが、デメリットがあります。

入れ歯のお手入れがしにくい

入れ歯安定剤は、入れ歯と粘膜の間に入れて密着させます。粘着性が強いタイプの場合は、入れ歯の内側に残りやすいでしょう。入れ歯のお手入れの際にブラシで取ろうとしても、うまく落とせないことがあるのです。

入れ歯の粘膜面に安定剤が残ったまま再び安定剤を使うと、しっかりと噛めなくなる可能性があります。

細菌が繁殖しやすい

入れ歯安定剤は、歯ぐきの粘膜に密着させて使います。粘着性の強いタイプのものは、入れ歯を外した後も粘膜に安定剤が残ることがあります。粘膜に安定剤が残ったままだと、細菌が繁殖しやすいです。

また、口の中の水分を吸収して、歯ぐきに密着させる安定剤もあります。お口の中が乾燥し、細菌が繁殖しやすくなるので注意が必要です。

上下総入れ歯で自分の歯ではなくても、お口の中を不衛生にするのは良くありません。粘膜に炎症を起こしたり、誤嚥性肺炎を発症するリスクが高くなるためです。

適切な噛み合わせにならない

入れ歯は噛み合わせのバランスを考慮して、設計・作成されています。安定剤を使うと、バランスが崩れて、適切な噛み合わせにならないことがあるのです。

噛み合わせが悪いまま使用すると、よく噛めないだけでなく、歯ぐきや粘膜にダメージを与えることもあるでしょう。

入れ歯安定剤に依存する場合がある

入れ歯安定剤を使うと、入れ歯が外れにくくなり、装着時の痛みが軽減されることがあります。快適に使用できるため手放せなくなり、入れ歯安定剤に依存する人もいるでしょう。

入れ歯安定剤を長期間使用すると、入れ歯のズレが大きくなり、噛み合わせが安定しにくくなります。修理が難しくなる場合もあるため、注意が必要です。

まとめ
総入れ歯をつけている人

今回は、総入れ歯を固定させる方法や、安定剤の必要性について解説しました。

総入れ歯の場合、入れ歯を固定するための歯がないため、歯ぐきや粘膜にのせて固定する必要があります。特に固定しにくい上の総入れ歯は、入れ歯を粘膜に吸着させることで安定させています。

総入れ歯が外れやすい場合、入れ歯がお口に合っていない可能性があります。歯科医院を受診し、入れ歯の調整をしてもらいましょう。

入れ歯安定剤は、入れ歯を外れにくくする便利なアイテムですが、頼りすぎると合わない入れ歯を使い続けることになります。入れ歯のズレが次第に大きくなり、修理が難しくなるリスクもあるでしょう。入れ歯安定剤を使用する前に、歯科医院を受診して相談してみてください。

入れ歯を検討している方は、神戸市東灘区にある木下歯科医院にお気軽にご相談ください。