失った歯の代わりを果たす入れ歯ですが「入れ歯にすれば虫歯や歯周病の心配がなくなる」と思っている方もいるのではないでしょうか。
今回は、入れ歯の人が虫歯や歯周病になるのかどうか、入れ歯のセルフケアの方法などについて解説します。ぜひ参考にしてください。
入れ歯の人は虫歯・歯周病にならない?
入れ歯の人は虫歯や歯周病にならないのでしょうか。
まず、入れ歯を使用している場合の虫歯についてご説明します。
入れ歯そのものは人工物であることから、虫歯にはなりません。
しかし、部分入れ歯などを利用していて自分の歯や歯根が1本でも残っている場合は、虫歯になるリスクがあります。総入れ歯の場合など、歯根が残っていないのであれば、虫歯になることはありません。
次に、入れ歯の歯周病についてご説明します。
歯周病は、部分入れ歯でも総入れ歯でもリスクがあります。歯や歯根がすべてない状態であっても、口腔内には歯周病を引き起こす菌が常在しているためです。セルフケアを怠ると、歯周病を引き起こすことがあります。
口腔内に菌や汚れが溜まることによるリスク
セルフケアを怠り、口腔内に菌や汚れが溜まるとどのようなリスクがあるのでしょうか。代表的なリスクは、以下のとおりです。
虫歯・歯周病になる
口腔内に菌や汚れが溜まると、虫歯・歯周病のリスクが高くなります。上述しましたが、歯や歯根が一切残っていなければ、虫歯になることはありません。
しかし、部分入れ歯の方は虫歯になることがあります。金属バネを装着して入れ歯を支えている歯は、削れたり動揺したりするリスクがあります。ほかの歯よりも弱くなるため、虫歯に注意する必要があるでしょう。
総入れ歯の場合でも、歯周病になることがあります。歯周病菌は歯のみではなく、舌や歯茎など口腔内全体に存在しているからです。そのため、セルフケアを怠ると歯周病菌が増殖し、歯周病を引き起こす原因となります。
誤嚥性肺炎になる
誤嚥性肺炎は、誤嚥により唾液や食べ物が気管や肺に入り、炎症を起こす病気のことです。
肺炎は、日本人の死亡原因として3番目に多い病気です。肺炎を患った方のほとんどが、誤嚥性肺炎だといわれています。誤嚥する唾液や食べ物に細菌が多く含まれていると、炎症を引き起こしやすくなります。
誤嚥は加齢とともにリスクが上昇するため、誤嚥した際に肺炎を起こさないよう口腔内を清潔に保ことが大切です。
義歯性口内炎になる
義歯性口内炎は、その名のとおり、入れ歯によって引き起こされる口内炎のことを指します。
義歯性口内炎が引き起こされる原因の一つは、入れ歯や口腔内が汚染されていることです。入れ歯に付着した汚れをデンチャープラークといい、デンチャープラークが入れ歯に付着し、細菌が増殖することで炎症を引き起こします。通常の口内炎と同様に、腫れや痛み、出血などの症状が生じます。
義歯性口内炎を予防するには、入れ歯を清潔に保つことが大切です。
口臭を引き起こす
口腔内に汚れが溜まると、虫歯・歯周病の進行や舌苔の付着などによって口臭を引き起こします。
入れ歯の汚れも口臭を引き起こす原因となります。毎日の口腔ケアや入れ歯の洗浄をしっかり行うことが大切です。
味覚が鈍化する
味覚は舌で感じるため、舌苔が付着する、舌が乾燥するなどが原因で、味覚が鈍くなることがあります。
歯磨きだけでなく、舌ブラシなどで舌もきれいにする習慣をつけましょう。
口腔カンジダ症になる
カンジダは口腔内に常在している菌ですが、カンジダが異常に増殖すると口腔カンジダ症を引き起こします。口腔ケアを怠る、入れ歯の汚れをそのままにして装着することが原因で、舌や顎がただれる、痛みが出るなどの症状があらわれます。
口腔内を清潔に保ち、入れ歯のお手入れをしっかりすることが大切です。
入れ歯の人の口腔ケア方法
口腔内に菌・汚れが溜まることのリスクを上述しました。
以下、入れ歯の人の正しい口腔ケアの方法をご説明します。就寝中は特に口腔内が汚染されやすい状態になるので、毎食後に加え就寝後も口腔ケアを行うことが理想です。
物品を用意する
はじめに、口腔ケアに必要な歯ブラシやコップ、タオルなどを準備しましょう。加えて、自分の口腔内の状態に合わせた物品があると、効果的に汚れを取り除くことができます。例えば、歯間ブラシやフロス、舌用ブラシ、スポンジブラシやガーゼなどが挙げられます。
入れ歯を外してうがいをする
入れ歯を外してうがいをしましょう。口を閉じ、両頬が膨らむようにブクブクとうがいをします。
入れ歯の清掃をする
外した入れ歯を清掃します。次項で入れ歯のお手入れ方法を詳しく解説しますので、参考にしてください。
口腔内を清掃する
歯磨きの前に、歯間ブラシやフロスなどを使用して歯間をきれいにします。歯ブラシでは取り除くことができない汚れや食べカスを取り除きましょう。
次に、歯ブラシで歯を磨きます。優しく細かく磨くことで、効果的に汚れを落とせます。総入れ歯の方は、柔らかめの歯ブラシやスポンジブラシ、ガーゼなどを使用して、歯肉や顎を清掃しましょう。
最後に、舌用ブラシや歯ブラシで舌苔を優しく取り除きます。
口腔内のマッサージ
口腔内をマッサージして、血流を促進しましょう。歯ブラシの背を頬の内側にあて、外側に広げます。上から下に、数回広げましょう。口回りの筋肉をほぐすことができます。
うがいをする
最後に、うがいをして汚れを取り除きます。
入れ歯のお手入れ方法
入れ歯を清潔に保つことは、歯周病などの予防に繋がるだけでなく、入れ歯を長持ちさせることにも繋がるでしょう。入れ歯は繊細で割れやすいため、破損を予防するためにも適切なお手入れ方法を身につけなければいけません。
入れ歯は破損・紛失しやすく、ティッシュに包んでそのまま捨てる方が多いです。装着時以外は、専用のケースに入れて保管しましょう。
以下、正しい入れ歯のお手入れ方法を解説します。
入れ歯を洗浄する
洗面器などの容器に水をためて、その上で洗浄します。
入れ歯が洗面台に落ちると破損する可能性があるため、必ず水をためた容器の上で洗浄してください。難しい場合は、タオルなどの衝撃を緩和できるものを下にひいておきましょう。
水道水で流しながら、入れ歯専用ブラシや柔らかめの歯ブラシで優しく洗浄します。歯間や金属バネの周囲は汚れが溜まりやすいので、丁寧に汚れを取り除いてください。
洗浄する際は、熱湯や研磨剤入りの歯磨き粉を使用しないでください。入れ歯の破損の原因になります。
洗浄剤につける
入れ歯専用の洗浄剤をぬるま湯に入れ、入れ歯をつけます。1日1回洗浄剤につけ、ブラッシングだけでは取り除けない汚れを落としましょう。外出先では、スプレータイプの洗浄剤を使用するとよいでしょう。
流水で洗浄する
つけおきやスプレーでの洗浄が終わったら、入れ歯を流水で洗い流します。ブラシで浮き上がった汚れや洗浄液を優しく取り除きます。
まとめ
入れ歯の人でも虫歯や歯周病になるリスクがありますが、毎日の口腔ケアや入れ歯の洗浄を正しく行うことでリスクを低減できるでしょう。過度な心配はせず、正しい口腔ケアと入れ歯の洗浄方法を身につけてください。
正しい口腔ケアと入れ歯の洗浄方法を身につけることは、誤嚥性肺炎や口腔カンジダ症などさまざまな疾患を予防することにも繋がります。快適に入れ歯を使用して、健康な生活を送りましょう。
入れ歯を検討している方は、神戸市東灘区にある木下歯科医院にお気軽にご相談ください。